会計基準の国際的統合(コンバージェンス)

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会計基準の必要性

現代の企業は、様々な利害関係者が関わって経営がされている。企業に資金を提供している株主や債権者、従業員、顧客などがそれである。これらの利害関係者は、自分が関わる企業の経営に関して非常に強い関心を持つ。というのも、企業の経営が上手くいけば自分も得をし、逆に、上手くいかなければ損をするからである。したがって、そのような利害関係者は企業が適切に経営がなされているかを知るために情報を必要としている

そのような情報の代表的なものが、貸借対照表損益計算書などの財務諸表の公表を中心とした財務報告である。財務報告とは、簡単にいえば、企業が持っている資産・負債または企業に出入りするお金の流れをまとめた情報である。利害関係者は、この財務報告を見ることによって企業経営の良し悪しを判断することができる。

日本においては、この財務報告に関する規制を設ける法律が存在する。第一に会社法である。会社法は株式会社などに対して、事業年度ごとに貸借対照表や損益計算書などの計算書類を作成し、利害関係者に対し開示することを求めている。第二に金融商品取引法である。金融商品取引法とは、幅広い金融商品を対象として、投資者保護ルールの徹底、利用者利便の向上、市場機能の確保、国際化への対応を目的に制定された法律であり、上場会社に対して財務諸表を作成し、金融庁に提出することを求めている。投資家などはこれらの情報を見て、その会社に投資をするかを決定する。

しかし、企業によって財務報告が行われたとしてもその報告の方法がバラバラであれば、投資家たちは、企業同士を比較することができない。企業は、自身の経営成績がよく見せるために利益を多く計上したり、課税を減らすために利益を少なく計上したりするかもしれない。単に財務報告がされるだけでは不十分であり、統一された会計処理のルールに従った財務報告がされる必要があるのである。

このような会計処理のルールが会計基準である。会計基準は、企業の会計慣行から一般に公正妥当と認められるものがルールとして採用される。そのようなルールを、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(Generally Accepted Accounting Principles:GAAP)という。

日本の会計基準

第二次大戦後、日本の会計基準は大蔵省に設置された企業会計基準審議会が設定していた。しかし、国際的な動向の影響を受け、2001年より、民間団体である企業会計基準委員会が日本の会計基準の作成を行っている。企業会計審議会が設定した会計基準の中でも以下の7つは現在でも効力を有する。

企業会計基準委員会が設定した「企業会計基準」は1号から27号まで存在する(第3号、第14号、第19号は第26号へ統合された)。

会計基準の国際的統合

上記の日本の会計基準は、日本の会社法、金融商品取引法などの法規制、日本の企業の経済環境、商慣習などを考慮して作成されている。日本以外の国においても、その国の法律、環境、慣習を反映して会計基準が作成されている。したがって、各国の会計基準はさまざまである

しかし、今日においては企業の資金調達活動、取引活動、投資家の投資活動が国境を越えて行われている。海外の投資家が日本の企業の株式の売買を行うことも活発に行われている。逆に、日本の投資家が海外企業の株式の売買を行う機会も増大している。

投資家の立場から見れば、各国で会計基準が異なると異なる国の企業の経営成績を比較することが困難となる。企業の立場から見れば、他国での資金調達を行う際に、他国の会計基準での財務報告が求められる場合がある。このような不便を解消するために昨今求められていることが、会計基準の国際的統合(コンバージェンス)である。

会計基準の国際的コンバージェンスには次のようなメリットが存在する。

  • 投資家が各国の企業の収益性や安全性といった経営成績を容易に国際比較することができる。投資家はどの企業に投資を行うか、どのようにリスクを行うかの意思決定が容易となる。
  • 企業が海外で資金調達を行う際、各国の会計基準に従った財務報告の作成の手間が省ける。国際的に統一された会計基準で作成された財務報告ならば、他国においても受け入れられやすく資金調達が容易となる。
  • 海外子会社と親会社の会計基準が一致し、経営管理が容易となる。会計基準が統一されれば、複数の国において子会社を有する企業は、子会社の会計情報を一元的に管理することができる。