行政救済法の概要

スポンサーリンク


行政救済法とは

行政救済法とは、行政活動によって個人の権利・利益が侵害された場合の救済制度に関する法律である。「行政」との語が付されていることからもわかるように、行政救済法は、私人対国・地方公共団体を想定した制度であり、私人間における救済制度とは異なる。一方で、民事法と行政法には次のような対応関係がある。すなわち、民事法では、権利義務関係が民法を通じて判断され、民事訴訟法に基づく手続に従って権利の救済が行われるのに対し、行政法においては、権利義務関係は行政作用法によって判断され、行政救済法に基づく手続に従って権利義務の救済が行われる。

民事法 行政法
実体法 民法 行政作用法
手続法 民事訴訟法 行政救済法

行政法における行政救済法の位置づけは次のようになる。

行政救済法の体系

行政救済法においては、4つの行政救済制度が重要となる。すなわち、①行政不服審査制度、②行政訴訟制度、③国家賠償制度、④損失補償制度である。以上のうち、①行政不服審査制度と②行政訴訟制度を合わせて行政争訟と呼び、③国家賠償制度と④損失補償制度を合わせて国家補償と呼ぶ。

行政争訟

行政争訟の目的は行政活動の是正であり、行政機関に不服を申し立てて、行政機関に是正させる①行政不服審査制度と裁判所に訴えて、判決を通じて行政活動の是正を図る②行政訴訟制度の2つの手段が存在する。

  • 行政不服審査制度:違法・不当な行政活動に対する私人からの申立てを受け、行政機関が当該行政活動を是正する制度。簡易迅速に決定がなされるというメリットが存在する一方で、行政機関による仲間うちでの判断がなされるため、中立性が保たれない場合がある。
  • 行政訴訟制度:裁判所が、私人からの提訴を受け、違法な行政活動を是正、防止し、または、なすべき行政活動を行政機関に対して命ずる制度。中立性を保証された独立の裁判官が関与するため信頼性が高いというメリットがある一方で、訴訟費用がかかり、判決が下るまで時間がかかるというデメリットが存在する。

国家補償

国家補償の目的は、違法または適法な行政活動から生じた財産的損害に対して、金銭による補償を行うことである。違法な行政活動による損害の賠償が③国家賠償制度によるものであり、適法な行政活動により生じた損失の補償が④損失補償制度によるものである。

  • 国家賠償制度:違法な行政活動により個人に生じた損害の賠償を図る制度。
  • 損失補償制度:適法な行政活動に起因して個人に生じた特別の犠牲に対する補償を図る制度。

法律による行政の原理

行政法の基本原理である「法律による行政の原理」は行政救済制度と密接に関連している。「法律による行政の原理」とは、行政活動が法律に基づき、法律に従って行われなくてはならないことである。よって、法律に違反した行政活動が国民の権利利益を侵害することは許されない。このような違法な行政活動は是正されなければならず、そのために行政争訟の制度が定められている。また、違法な行政活動の損害・損失を補填するため国家賠償制度が定められている。

また、「法律による行政の原理」は違法な行政活動を行わないばかりでなく、求められる行政活動を違法・不当に怠ることがないようにすることも求めている。例えば、都道府県が廃棄物処理場の建設許可を出したが、当該廃棄物処理場から有害物質が流出して周辺住民の生活環境の保全上支障が生じるおそれがある場合は、国民は建設許可を違法であるとして争うことができる。