契約書の基礎

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契約書作成・締結の目的

契約書作成・締結の目的とは、将来の争いに備えることである。予め契約によって紛争の解決策について合意しておけば、後日発生した紛争をスムーズに解決することができる。

契約成立の要件

契約は次の3つの要件によって成立する。

  1. 契約の申込みとそれに対する承諾があること
  2. 契約締結能力があること
  3. 契約の有効性を否定する事情(詐欺、強迫、錯誤、公序良俗違反、取締法違反など)が存在しないこと

要件を充足すれば契約は有効に成立し、当事者を拘束する。契約自由の原則により、強行規範等に反しない限り、当事者は自由に契約を締結することができる。契約自由の原則の内容は以下の通りである。

  1. 内容の自由:契約で合意する内容は当事者が自由に決定できる。
  2. 方式の自由:契約で合意する方式は当事者が自由に決定できる。例えば、書面によるか、口頭によるかなど。
  3. 締結の自由:契約を締結するかしないかは当事者が自由に決定できる。
  4. 相手方選択の自由:契約を締結する相手方は当事者が自由に決定できる。

いずれの自由においても、強行規定に反するものは認められない。

契約と法律の関係

法律には、強行規定と任意規定が存在する。強行規定とは、締結された契約に法律違反があった場合に契約の内容を修正したり、契約自体を無効にしたりするものである。他方で任意規定とは、契約当事者間でその適用を排除したり、契約当事者間で特に合意がされていない場合に補充的に適用されたりするものである。

契約が無効になる場合として次のようなものがある。「製品の瑕疵につき、販売者は責任を免除される」といった条項を含む契約を締結した場合、消費者契約法8条1号は、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効となる、とするところ、当該条項は無効となる。

また、ある事項について契約における合意が存在しない場合は、民法等が適用される。契約書であらゆる事項について合意していれば、紛争は契約に基づいて解決することができるが、網羅的な契約を締結することは当事者にとって大きな負担であり、また、あえて特定の事項について定めない場合が存在する。そういった場合においては民法などの一般的な規則が適用される。

契約書の2類型

契約書には、交渉型と約款型の2つの類型が存在する。

交渉型とは、当事者が交渉し、そこでの合意を反映する形で締結する契約書である。他方で、約款型とは、交渉の場面がなく予め契約条項が定められており、当事者特に消費者が売買契約などの契約関係に入れば、拘束力が認められる契約書である。例えば、ネットショップで商品を購入する場合において、消費者は商品を購入すると同時に予め定められた利用規約に拘束されることになる。

約款型につき、「書式の闘い(Battle of Forms)」という問題が存在する。両当事者が異なる条件の約款を提示した場合、どちらが適用されるのかという問題である。この問題を解決するのが、「ラストショットルール」である。「このルールは 申込みの承諾において付加的あるいは異なった条件が提案された場合に,そのような条件に対して他方が口頭での否定や遅滞なく書面で拒絶通知を出さない限りは契約の一部となる」というものである[1]。一方当事者が送付した約款に対し、他方当事者が拒絶しなければ、契約はそのまま成立する。もし、他方当事者が拒絶し新たな約款を送付した場合は、当初の当事者が拒絶しなければ、新たな約款により契約が成立する。拒絶すれば、再度新たな約款を送付することになる。以下、繰り返しである。

契約書の書式

以下、物品の売買契約書の雛形である。

引用:ロイズ司法書士事務所ウェブサイト(http://www.lawiz.net/template/template/076.html)

物品売買契約書

売主 ロイズ太郎 (以下、「甲」という。)と、買主 鈴木太郎 (以下、「乙」という。)は、物品の売買に関し、以下の通り契約を締結する。

第1条  目的となる物品(以下「本物品」という)は、次の通りとする。

① 品名  ○○○○

② 数量  ○○○○

第2条

1 本物品の単価は、金○○○○円也とする。

2 売買代金は、総額金○○○○円也とする。

第3条 甲は、本物品を、平成○○年○○月○○日までに、 ○○県○○市○○○○の乙の○○○○に持参して納入する。なお、納入に要する費用は、甲が負担する。

第4条

1 乙は、本物品納入後、○○日以内に物品の検査をする。

2 物品の受渡は、前項の検査終了と同時に完了するものとする。

第5条 売買代金の支払は、前条の商品検査終了後、○○日以内に、甲の指定する銀行口座に振込む方法にて行う。

第6条 甲が乙に対し債務を負担しているときは、本債権の履行期の到来していると否とにかかわらず、甲の乙に対する債権と債務は、直ちに相殺適状となる。

第7条 乙が、第5条の代金の支払を遅延したときは、商品代金に日歩○○銭の計算による遅延損害金を支払う。

第8条 本物品の所有権は、売買代金支払完了と同時に、乙に移転する。

第9条 本物品の引渡前に生じた物品の滅失又は毀損による損害は、乙の責に帰すべきものを除き、甲の負担とし、物品の引渡後に生じたこれらの損害は、甲の責に帰すべきものを除き、乙の負担とする。

第10条 乙が、次の事項の一つに該当した場合、乙は当然に期限の利益を喪失し、甲は、乙に対し、売買代金全額を一時に請求できる。

① 財産状態が悪化し、又はそのおそれがあると認められる相当な兆候があるとき

② ○○○○

第11条 甲は、乙が引渡期日に本物品を受取らず、あるいは受取ることができない場合には、何時にても、本物品を乙の計算において任意に処分し、その代価をもって乙に対する損害賠償請求権を含む一切の債権に充当し、不足額があるときは、さらに乙に請求することができる。

第12条 本物品の受渡後、隠れた瑕疵が発見された場合、乙は甲に対し、代品納入若しくは代金減額又は代金返却を請求することができる。なお、当該瑕疵が本契約の目的を達することができない程度のものである場合には、乙は契約を解除できる。

第13条 乙が第10条各号の一つに該当したときは、甲は、催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。なお、この場合も、甲の損害賠償の請求を妨げない。

2 甲又は乙が本契約に違反したときも、相手方は催告を要せず、直ちに本契約を解除し、その損害を賠償することができる。

第14条 本契約に定めなき事項又は本契約の解釈につき疑義が生じた場合は、甲乙協議の上、解決するものとする。

第15条 本契約に関する紛争の管轄裁判所は、甲の本店所在地を管轄する裁判所とする。

第16条 本契約に定めのない事項が生じたとき、又はこの契約条件の各条項の解釈につき疑義が生じたときは、甲乙誠意をもって協議の上解決するものとする。

以上、本契約成立の証として、本書を二通作成し、甲乙は署名押印のうえ、それぞれ1通を保管する。

平成○○年○○月○○日

(甲) 住所  ○○県○○市○○○○

氏名  ロイズ太郎

(乙) 住所  ○○県○○市○○○○

氏名  鈴木太郎

まず、契約書の表題が記されています。次に、冒頭には、契約締結の当事者内容が記されている。1条には目的物、2条には金額、3条には履行地が規定されています。これらの規定は、売買契約においては必要不可欠な要素である。4条以下では、履行の方法や当事者の義務、不履行の場合の当事者の請求権、紛争解決の方法などが規定されている。1~3条のみでも売買契約を締結することは可能だが、4条以下の規定により紛争の迅速な解決を可能とする。最後が、当事者の署名である。

契約書の分類

基本契約書 繰り返し行われる取引につき、すべての個別契約書に適用される包括的な条件を定める。
個別契約書 基本契約書に基づく取引につき、取引のたびに個別契約書によって目的物、数量、金額などの詳細な事項を定める。

正式契約書 当事者が最終的に締結した契約書。
覚書 最終的な締結までは至っていないが、交渉し合意した内容につき確認しておく書面。

[1] 田中恒好「日本法と米国法の観点からのウィーン売買条約 (CISG) その( 4 )」『立命館法学』344号347頁、358-9頁。

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