物権変動の時期

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物権変動とは

物権変動とは、物権の発生、変更、消滅の総称をいう。物権変動は当事者の意思表示があった時点で生じる(176条)。意思表示によってのみ物権変動が生ずるならば、売買契約を行ったその時点で所有権が移転することになるが、物の対価を支払わないうちに変動することを認めてもよいのだろうか

この点について裁判例は、物権変動はその原因となる法律行為の成立時に生ずるとしている。

最判昭和33年6月20日

【事実】

Yは、本件土地と本件土地上の本件建物(未登記)を所有していたが、昭和27年7月、本件土地と本件建物を、Xに売り渡した。本件売買契約では、Xが代金163万余円のうち、60万円を契約締結と同時に支払い、さらに40万円を昭和27年12月31日までに支払い、残余金額を昭和28年3月31日までに本件建物の明渡しと同時に支払う旨が約定された。その後、XはYに対して、本件売買契約の代金の一部として60万円と40万円を支払った。Xが、Yを被告として、(1)残余金である43万余円の支払と引き換えに、本件土地の所有権移転登記と本件建物の明渡しを求め、さらに(2)Xが本件建物の所有権を有する旨の確認を求めて、訴えを提起した。

1審⇒Xのいずれの請求をも認容 2審⇒Yの控訴を棄却

Yが上告

【判旨】

上告棄却。

売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする。そして原審は、所論(丙)の建物については、売主(上告人)の引渡義務と買主(被上告人)の代金支払義務とは同時履行の関係にある旨を判示しているだけであつて、右建物の所有権自体の移転が、代金の支払または登記と同時になさるべき約旨であつたような事実を認めていないことは、原判文上明白である。それ故、原判決には、所論のような違法はなく、論旨は採用できない。

評価

本判決は、代金が完済されておらず引渡しもされていない物について所有権の移転を認めた。つまり、売買契約において物権変動はその契約締結時に生じることを示した。しかし、本件に関しては代金の6割はすでに支払われており、残代金も提供されていることから、売主には所有権移転を留め置く根拠はなく、契約成立時によらずとも所有権移転は肯定される可能性もあり、上記の定式が一般的に妥当するのかという疑問もある。

まとめ

思うに、176条の規定ぶりから見れば、物権変動は意思表示が行われた時点で生ずると解するのが適当であり、民法の一般的な権利変動原因である意思表示を物権変動の基準とするのは問題がない。一方で、最判昭和33年6月20日が判示するように、当事者が合意により結んだ、所有権移転時期に関する特約があればそれに従うべきである。

つまり、原則として所有権移転の時期を意思表示の時点とし、特約がある場合には、契約の性質、取引慣行に照らして当事者の意思解釈により、所有権移転の時期を導き出し、事案に適合した解決を図るのが妥当である。所有権移転の時期は取引当事者にとっては重大な関心事であり、危険負担の問題ともかかわってくるので、不合理な結果を回避するため、当事者間で契約により移転時期を定めておくことが、取引安全の観点からも最も良いと思われる。

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