事情変更の原則

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事情変更の原則

Aは、Bからネジを毎月10000個購入していた。しかし、Bがネジの原料となる鉄を輸入していた甲国が輸出規制を行い、Bはネジを製造することができなくなった。Aが代金を支払ったが、Bはネジの引渡しを拒絶することができるだろうか。

これは事情変更の原則の問題である。事情変更の原則によれば、契約締結時に前提とされた事情がその後変化し、契約上の履行を行うことが当事者間の公平に反するとされる場合に、当事者は契約解除や契約内容の修正を請求することができる。つまり、事情変更の原則の要件が満たされれば、Bは契約解除などにより、債務履行の請求を拒絶することができる。この要件について検討した判例がある。

最判平成9年7月1日

【事実】

Aがゴルフ場を開設し、Xらと会員契約を締結した。その後、ゴルフ場の経営権がAからB、BからYへと移された。このゴルフ場は、施工不良と長雨により、大規模なのり面の崩壊が生じて営業不可能になり、Bが改良工事を行い、費用をYが負担することになった。Yは工事の負担のため、Xらに1000万円の追加金を支払い会員資格を維持するか、退会するかを求めた。Xらは、会員資格の存在を確認する訴えを提起した。

1審⇒Xらの請求容認 2審⇒Xらの請求棄却

Xら上告

【判旨】

事情変更の原則を適用するためには、契約締結後の事情の変更が、 当事者にとって予見することができず、かつ、当事者の責めに帰することのできない事由によって生じたものであることが必要であり、かつ、右の予見可能性や帰責 事由の存否は、契約上の地位の譲渡があった場合においても、契約締結当時の契約当事者についてこれを判断すべきである。

一般に、事情変更の原則の適用に関していえば、 自然の地形を変更しゴルフ場を造成するゴルフ場経営会社は、特段の事情のない限 り、ゴルフ場ののり面に崩壊が生じ得ることについて予見不可能であったとはいえ ず、また、これについて帰責事由がなかったということもできない

本件ゴルフ場は自然の地形を変更して造成されたものであり、Aがこのこ とを認識していたことは明らかであるところ、同社に右特段の事情が存在したこと の主張立証もない本件においては、事情変更の原則の適用に当たっては、同社が本 件ゴルフ場におけるのり面の崩壊の発生について予見不可能であったとはいえず、 また、帰責事由がなかったということもできない。そうすると、本件改良工事及び これに要した費用一三〇億円が必要最小限度のやむを得ないものであったか否か並 びにD観光に対して本件改良工事の費用負担を求めることが事実上不可能か否かに ついて判断するまでもなく、事情変更の原則を本件に適用することはできないとい わなければならない。

評価

本件は事情変更の原則の要件を、(1)予見が不可能性であったことと(2)当事者の帰責事由がないこととしている。1点目についてはゴルフ場の一般的特質を根拠に、2点目については、予見ができたのだから何かしらの対処ができたということを根拠に、本件では、予見可能であり、帰責事由があったとして事情変更の原則の適用を否定している。

この事情変更の原則は、民法1条2項の信義則から派生したものである。私的自治の例外である。しかし、単なる事情変更では、契約履行を簡単に回避することができてしまうため、後の裁判例では、著しく周囲の状況が変更したことの要件が提示された(最判平成16年6月29日)。

事情変更の原則の効果

事情変更の原則の効果は、契約の解除と改訂とされる。一般的には、第1の効果が改訂、第2の効果が解除と解するのが、適切である。なぜなら、契約の維持、尊重を実現するためには、契約を改定してでも、契約の目的を達成することが重要だからである。

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