消費者契約法概説

事業者と消費者が取引を行う場合には、情報力・判断力・交渉力といった点で格差がある。一般的にこれらの点で劣位に立つ消費者は真に自己決定をすることができない。そのために用意されているのが消費者契約法である。

消費者契約法1条

この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

消費者契約法の主たる内容は、以下の二つである。

  1. 消費者が契約締結過程で事業者から不当な干渉を受けた場合に、消費者に意思表示の取消権を認める(消費者の取消権)(4条)
  2. 契約に消費者の利益を不当に害する条項が含まれている場合に、当該条項を無効にする(不当条項の無効
スポンサーリンク


消費者の取消権

消費者契約法は、事業者が契約締結過程で、①消費者に誤認を惹起する行為(誤認惹起行為)、または、②消費者に困惑を惹起する行為(困惑惹起行為)を行い、消費者が誤認あるいは困惑をした場合に、消費者に意思表示の取消権を認めている。

誤認惹起行為

誤認惹起行為は次の3つである。

  1. 重要事項について事実と異なることを告げることである(4条1項1号)。
  2. 消費者契約の目的物に関して、将来における価額、変動が不確実な事項について断定的判断を提供すること(4条1項2号)
  3. 消費者の不利益となる事実を故意に告げないこと(4条2項)

困惑惹起行為

困惑惹起行為は次の2つである。

  1. 事業者に対し、消費者が住居や職場からの退去すべき旨の意思表示をしたにもかかわらず、事業者が退去しないこと(訪問販売の場合など)(4条3項1号)
  2. 事業者に対し、消費者が契約勧誘を受けている場所から退去させるように求めたのにもかかわらず、事業者がその場所から退去させないこと(4条3項2号)

取消権の行使

以上の場合において、消費者は意思表示を取り消すことができる(4条1項・2項・3項)。この取消しの方法、効果は原則として、民法及び商法の規定によるが(11条)、次の点で異なる。

第一に、取消しは追認可能な時点から6か月以内、または契約締結時から5年以内にしなければ、この取消権は時効により消滅する(7条1項)。「追認可能な時点」とは、誤認惹起類型の場合には、誤認が生じた時点、困惑惹起類型の場合には、事業者が消費者の住居から退去した時点または消費者が勧誘場所から退去した時点となる。

第二に、取消しは善意の第三者に対抗することができない(4条5項)。

不当条項の無効

消費者契約法が無効とする不当条項は以下の3つがある。

事業者の損害賠償責任を減免する条項

損害賠償責任を減免する条項の無効は消費者契約法8条に規定されている。

次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項

 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の全部を免除する条項

 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除する条項

 消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項

つまり、①事業者の損害賠償責任を全部免除する条項、②事業者の故意または重大な過失による損害賠償責任を一部免除する条項及び③事業者の瑕疵担保責任を全部免除する条項は無効である。ただし、③については例外があり、事業者が代物給付または瑕疵修補の責任を負う場合か、他の事業者が損害賠償責任の全部もしくは一部、代物給付または瑕疵修補の責任を負う場合は、無効とならない(8条2項)

消費者の支払うべき損害賠償等を予定する条項

消費者の支払うべき損害賠償を予定する条項のすべてが無効になるわけではなく、それが一定基準の賠償額を予定している場合には、その超過部分が無効となる。

  1. 消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの(9条1号)
  2. 消費者が金銭債務を支払期日までに支払わない場合に関する損害賠償を予定し、または違約金を定める条項で、その条項における予定額と違約金額を合算した額が当該支払期日における支払残高に年14.6%を乗じた額を超える場合(9条2号)

消費者の利益を一方的に害する条項

消費者契約法10条は次のように規定する。

 民法、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

ここでいう「任意規定」は、法令の規定に限られるのか、あるいは、不文の法理も含まれるか対立がある。また、「信義則」についても、民法上の基準と同一であるという考えと、民法では必ずしも無効とされない条項をも無効にすることができるという考えが対立している。

スポンサーリンク



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする