種類債権の特定

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種類債権

一定の種類に属する物の一定量の引渡しを目的とする債権を種類債権という。例えば、Aが、Bとの間でビール1ダースを売却する契約を締結する場合においては、ビールという物を1ダース引き渡すという点で、種類債権が発生する。種類債権では、債権内容の実現のため、種類債権を特定する必要がある。種類債権を特定するとは、一定の種類に属する物の中から具体的に給付する必要がある量を選定することを意味する。ビールの例でいえば、Aは倉庫にあるたくさんのビールの中から1ダース取り出さなければならない。

種類債権の特定は民法401条2項が規定する。

前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。

種類債権の場合、種類債権が特定された時点で所有権は移転する。この種類債権の特定について争われた裁判例について検討する。

最判昭和30年10月18日

【事実】

昭和21年、Xは、Yから漁業用タール2000tを買い受ける契約をした。引渡しの方法は、XがYの下へ、タールを引き取りに行くというものであった。Yは、引き渡し準備を完了し、その通知をXにした。Xは、途中までタールを取りに行っていたが、品質が悪いとして、2000tに達する前に取りに行かなくなってしまった。そのためタールは放置され、処分され滅失してしまった。そこで、Xは、Yのタール引渡し不履行を理由に残余部分の契約を解除する意思表示をし、支払い済み代金から引き渡しを受けたタールの価額を差し引いた残金の返還を請求した。

1・2審-Xの請求を容認

Yが上告。

【判旨】

破棄差し戻し。

本件売買契約は、売買の目的物の性質、数量等から見れば、特段の事情の認められない本件では、不特定物の売買が行われたものと認められる。そして、Yが言語上の提供をしたからといって、物の給付を為すに必要な行為をを完了したことは明らかである

評価

本件は、債権者が債務者の住所で目的物を取り立てて履行を求める取立債務の例である。判決は、売主が引渡場所を通知して引渡しに必要な作業員を配置しただけでは、特定があったとはいえず、また、債務者が、弁済の準備ができたことを通知する(「口頭の提供」)だけでは、種類債権の特定がなされたとはいえず所有権の移転は生じていないとする。判例では明示していないが、一般的に所有権移転は目的物が分離した時点で生ずると理解されている。

民法改正法案

民法改正法案401条2項は次のように規定する。

民法第401条第1項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、債権者から与えられた権利を行使してその給付すべき物を指定し、又は債権者との合意によりその給付すべき物を定めたときは、以後その物を債権の目的物とする。

改正法案によれば、種類債権の特定は口頭の提供では足りないという判例法理は維持されている。更に、債権者と債務者が合意によりその給付すべき物を定めた場合にも特定が生ずる旨を明文化した。改正法案のもとでは、種類債権の特定は、分別・分離により画一的に判断するのではなく、特定に結び付けられた効果を両当事者に与えるのがふさわしいのは債務者により、どのような行為がなされた場合なのかを検討していくことになる。

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