約款による契約-拘束力の理論的根拠

約款とは、多数の取引に対して一律に適用するために事業者により作成され、あらかじめ定型化された契約条項のことである。保険契約、運送契約、銀行取引契約などの同種の取引が大量、反復、継続して行われる場合に、企業が取引を合理的に処理するために利用される。

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約款の問題点

現実の社会においては多くの場面で利用される約款だが、問題点もある。約款による契約では、契約条件について個別に交渉が行われることがなく、消費者は事業者が作成した約款を受け入れるか受け入れないかを選択するしかない(附合契約)。このような契約に拘束力を認めるべきかという問題がある。

しかし、運送契約や保険契約など大量に取引が行われる場合において、個々の取引相手と交渉を行い契約を締結することは合理的とはいえず、事業者に対して過度の負担となる。わが国においては、約款の拘束力は原則認められるが、個々の条項が消費者の利益を不当に害する場合は、その条項は不当条項として無効になる。

約款の拘束力の理論的根拠

約款の拘束力を説明する学説には、(1)法律行為理論、(2)意思推定理論、(3)自治法理論、(4)商慣習理論(白地商慣習説)、(5)新契約理論が存在する。

(1)かつては、約款による契約も通常の契約と同様に、当事者が契約内容を十分に認識して効力が生じるという見解(法律行為理論)が存在した。

(2)大審院は、火災保険の普通保険約款について、火災保険契約の当事者が特に普通保険約款によらない意思を表示せずに契約をした場合には、反証がない限りその約款による意思で契約したものと推定すべきであるとした(大判大正4年12月24日民録21輯2182頁)。この立場を意思推定理論という。

(3)これに対し、このような解釈では、法的安定性が失われるとの批判から自治法理論が提唱された。これは、「社会あるところに法あり」との法諺から団体の自主制定法として法規と同一の効力を認める見解である。しかし、約款に対して法源性を認めることは困難であるとの批判がある。

(4)そして有力に主張されるようになったのが、商慣習理論(白地商慣習説)である。これは、ある種の取引圏においては、「取引は一般に約款による」ということが、商慣習法ないしは事実上の商慣習が成立していると考える見解である。但し、ある取引分野において、初めて約款が利用される場合においては約款の拘束力に疑問が生じることとなる。

(5)以上の学説の批判を受け、最近の学説では、新契約理論が有力に主張されている。これは、約款の拘束力については、約款を契約に組み入れるとの当事者の合意だけで必要かつ十分であるという見解である。消費者の「約款を契約に組み入れる」との意思が認められるためには、約款が消費者に対して開示されていることが必要である。

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