【予備試験】平成29年短答式憲法解説

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〔第1問〕(配点:3)

日本国民である父親から出生後に認知された子の日本国籍の取得をめぐる国籍法違憲判決(最高裁判所平成20年6月4日大法廷判決,民集62巻6号1367頁)に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№1]から[№3])

ア.前記判決は,日本国民を血統上の親として出生しながら,日本国籍を生来的に取得できなかった子について,日本国籍を生来的に取得した子よりも日本国籍の取得の要件を加重すべきであるとする立法目的には,法律婚を尊重する観点から合理的な根拠があるとした。[№1]

イ.前記判決は,日本国民である父親から出生後に認知された子について,父母の婚姻が日本国籍の取得の要件とされている点をして,立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用したものであるとした。[№2]

ウ.前記判決は,婚姻関係にない父母から出生した子について将来にわたって不合理な偏見を生じさせるおそれがあることなどを指摘し,父母の婚姻という事柄をもって日本国籍の取得の要件に区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては慎重に検討することが必要であるとした。[№3]

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答

ア:2 イ:1 ウ:2

本問は、憲法14条の法の下の平等に関する問題である。国籍法2条1号は「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」、その子は日本国籍を取得すると定める。婚外子[1]の場合においては、父より胎児認知(民法783条1項)を受けていれば国籍を取得するが、生後認知の場合はこの要件に該当しない。民法によれば、認知の効力は出生時に遡るとされているが、国籍法の解釈では認知の遡及効は否定されているからである。例えば、最判平成14年11月22日判時1808号55頁は、「生来的な国籍の取得はできる限り子の出生時に確定的に決定されることが望ましいところ,出生後に認知されるか否かは出生の時点では未確定であるから,法2条1号が,子が日本人の父から出生後に認知されたことにより出生時にさかのぼって法律上の父子関係が存在するものとは認めず,出生後の認知だけでは日本国籍の生来的な取得を認めないものとしていることには,合理的根拠がある」と判示した。

旧国籍法3条1項は、届出による国籍取得を定めていたが、「父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子」すなわち準正嫡出子(民法789条)に限定していた。

最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁は、法制定後の家族正解・親子関係の変化・多様化に照らして、「準正子」と「父母が内縁関係にある非嫡出子」との間の区別は、立法目的との間に合理的関連性を見出すことができないとした。そして、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父から出生後に認知されたにとどまる子についても届出により国籍が取得できるとした。以下、事実と判旨を示す。

【事実】

法律上の婚姻関係にない日本国民である父とフィリピン共和国籍の母との間に生まれたXは、平成15年、出生後父から認知されたことを理由に法務大臣に国籍取得届を提出した。しかし、旧国籍法3条1項の規定のため、Xは国籍取得の要件を備えているとは認められないとの通知を受けた。そこで、Xは、旧国籍法3条1項が意見であると主張し、日本国籍を有することの確認を求めて提訴した。

第1審は、旧国籍法3条1項が「準正子」と「父母が内縁関係にある非嫡出子」との間で不合理な区別を生じさせているとして、憲法14条1項の違反を認めた。その上で、Xの日本国籍を認める判断を下した。

第2審は、たとえ旧国籍法3条1項が憲法14条1項に違反し無効になったとしても、そのことから当然にXが日本国籍を取得することは不可能であり、旧国籍法3条1項の拡張適用は法律に定めのない国籍取得要件を創設するものであり、裁判所よる立法作用に当たるので許されないとして、第1審の判決を取り消しXの請求を棄却する判断を下した。

Xは、第2審の判断を不服として上告した。

【判旨】

憲法10条[2]の規定は,国籍は国家の構成員としての資格であり,国籍の得喪に関する要件を定めるに当たってはそれぞれの国の歴史的事情,伝統,政治的,社会的及び経済的環境等,種々の要因を考慮する必要があることから,これをどのように定めるかについて,立法府の裁量判断にゆだねる趣旨のものであると解される。しかしながら,このようにして定められた日本国籍の取得に関する法律の要件によって生じた区別が,合理的理由のない差別的取扱いとなるときは,憲法14条1項違反の問題を生ずることはいうまでもない。すなわち,立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても,なおそのような区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められない場合,又はその具体的な区別と上記の立法目的との間に合理的関連性が認められない場合には,当該区別は,合理的な理由のない差別として,同項に違反するものと解されることになる。

日本国籍は,我が国の構成員としての資格であるとともに,我が国において基本的人権の保障,公的資格の付与,公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは,子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって,このような事柄をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては,慎重に検討することが必要である。

日本国民を血統上の親として出生した子であっても,日本国籍を生来的に取得しなかった場合には,その後の生活を通じて国籍国である外国との密接な結び付きを生じさせている可能性があるから,国籍法3条1項は,同法の基本的な原則である血統主義を基調としつつ,日本国民との法律上の親子関係の存在に加え我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設けて,これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとしたものと解される。このような目的を達成するため準正その他の要件が設けられ,これにより本件区別が生じたのであるが,本件区別を生じさせた上記の立法目的自体には,合理的な根拠があるというべきである。

また,国籍法3条1項の規定が設けられた当時の社会通念や社会的状況の下においては,日本国民である父と日本国民でない母との間の子について,父母が法律上の婚姻をしたことをもって日本国民である父との家族生活を通じた我が国との密接な結び付きの存在を示すものとみることには相応の理由があったものとみられ,当時の諸外国における前記のような国籍法制の傾向にかんがみても,同項の規定が認知に加えて準正を日本国籍取得の要件としたことには,上記の立法目的との間に一定の合理的関連性があったものということができる。

しかしながら、 […] 我が国を取り巻く国内的,国際的な社会的環境等の変化に照らしてみると,準正を出生後における届出による日本国籍取得の要件としておくことについて,前記の立法目的との間に合理的関連性を見いだすことがもはや難しくなっているというべきである。

以上のとおり,国籍法3条1項の規定が本件区別を生じさせていることは,遅くとも上記時点以降において憲法14条1項に違反するといわざるを得ないが,国籍法3条1項が日本国籍の取得について過剰な要件を課したことにより本件区別が生じたからといって,本件区別による違憲の状態を解消するために同項の規定自体を全部無効として,準正のあった子(以下「準正子」という。)の届出による日本国籍の取得をもすべて否定することは,血統主義を補完するために出生後の国籍取得の制度を設けた同法の趣旨を没却するものであり,立法者の合理的意思として想定し難いものであって,採り得ない解釈であるといわざるを得ない。そうすると,準正子について届出による日本国籍の取得を認める同項の存在を前提として,本件区別により不合理な差別的取扱いを受けている者の救済を図り,本件区別による違憲の状態を是正する必要があることになる。

このような見地に立って是正の方法を検討すると,憲法14条1項に基づく平等取扱いの要請と国籍法の採用した基本的な原則である父母両系血統主義とを踏まえれば,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し,父から出生後に認知されたにとどまる子についても,血統主義を基調として出生後における日本国籍の取得を認めた同法3条1項の規定の趣旨・内容を等しく及ぼすほかはない。すなわち,このような子についても,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したことという部分を除いた同項所定の要件が満たされる場合に,届出により日本国籍を取得することが認められるものとすることによって,同項及び同法の合憲的で合理的な解釈が可能となるものということができ,この解釈は,本件区別による不合理な差別的取扱いを受けている者に対して直接的な救済のみちを開くという観点からも,相当性を有するものというべきである。

以上によれば、本問アは、「法律婚を尊重する」ことを立法目的とする点で不適切である。本問イは、上記判断の内容と合致しており正しい。本問ウは、「婚姻関係にない父母から出生した子について将来にわたって不合理な偏見を生じさせるおそれがある」としている点で不適切である。最高裁が指摘したのは、「日本国籍は,我が国の構成員としての資格であるとともに,我が国において基本的人権の保障,公的資格の付与,公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは,子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である」ということである。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)138-9頁
  • 毛利透他『憲法Ⅱ』(2015年)91-4頁
  • 憲法判例百選Ⅰ(第6版、2013年)35事件

〔第2問〕(配点:3)

思想・良心の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№4]から[№6])

ア.企業が従業員を採用するに際して,その者の在学中における団体加入や学生運動参加の事実の有無について申告を求めることは,その事実がその者の思想・良心と全く関係ないものではないから,違法である。[№4]

イ.市立小学校の入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をする行為は,音楽専科の教諭にとって通常想定され期待されるものであり,当該教諭が特定の思想を有するということを外部に表明する行為であると評価することは困難なものである。[№5]

ウ.公立高等学校の卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱する行為は,学校の儀礼的行事における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,同校の校長が教諭に当該行為を命じても,当該教諭の思想・良心の自由を何ら制約するものではない。[№6]

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答

ア:2 イ:1 ウ:2

本問は、憲法19条の思想・良心の自由の制約に関する問題である。

本問アは、最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)の内容を問うものである。本事件は、私企業の採用面接において在学中の学生運動歴について虚偽の申告を行ったことを理由に、3か月の試用期間終了時に本採用を拒否されたというものである。最高裁は、「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り」、「、企業者が雇傭の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない」とした。よって、本問アは、企業が従業員を採用するに際して,その者の在学中における団体加入や学生運動参加の事実の有無について申告を求めることが、直ちに違法となるとしている点で誤りである。

本問イは、最判平成19年2月27日民集61巻1号291頁(日野市「君が代」ピアノ伴奏事件)の内容を問うものである。本事件は、市立小学校の音楽専科の教諭が校長から入学式での君が代斉唱ピアノ伴奏をするように命じられたが、この職務命令に従わなかったため、懲戒処分を受けた事案である。最高裁は次のように示した。ピアノ伴奏と君が代に関する歴史観・世界観とは一般的に不可分の関係にあるわけではなく、ピアノ伴奏を命ずる職務命令は、「伴奏」という外部的行為を命ずるのみであり、伴奏者の内心において抱く思想・良心そのものを侵害するものではない。また、入学式における君が代の伴奏は、音楽専科の教諭にとって通常想定され期待されるものであって、特定の思想を表明する行為とは受け入れられない。したがって、本問イの内容は正しい。

本問ウは、いわゆる起立斉唱命令事件の内容を問うものである。教員らに「君が代」の起立斉唱を命ずる職務命令の合憲性を判示した裁判例には、(1)最判平成23年5月30日民集65巻4号1780頁、(2)最判平成23年6月6日民集65巻4号1856頁、(3)最判平成23年6月14日民集65巻4号2148頁、(4)最判平成23年6月21日判時2123号35頁があるが、その共通する部分を理解する必要がある。以下では(1)事件より引用する。

起立斉唱行為は,教員が日常担当する教科等や日常従事する事務の内容それ自体には含まれないものであって,一般的,客観的に見ても,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるということができる。そうすると,自らの歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となる「日の丸」や「君が代」に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が,これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められることは,その行為が個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものではないとはいえ,個人の歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為(敬意の表明の要素を含む行為)を求められることとなり,その限りにおいて,その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い

判例の趣旨からすれば、起立斉唱命令は、個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものではないが、間接的な制約となる面がある。本問ウは「当該教諭の思想・良心の自由を何ら制約するものではない」としている点で誤りである。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)152-3頁
  • 毛利透他『憲法Ⅱ』(2015年)125-31頁
  • 憲法判例百選Ⅰ(第6版、2013年)10・85事件

〔第3問〕(配点:3)

知る権利や表現の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№7]から[№9])

ア.放送事業者は,権利の侵害を受けた者の請求に基づく調査によって放送内容が真実でないことが判明した場合,放送法の規定により訂正放送をしなければならないが,これは,放送内容の真実性の保障及び干渉排除による表現の自由の確保の観点から,放送事業者において自律的に訂正放送を行うことを公法上の義務として定めたものである。[№7]

イ.裁判の傍聴人が法廷においてメモを取ることについては,憲法第21条第1項の規定により憲法上の権利として保障されており,法廷警察権によってこれを制限又は禁止することは,公正かつ円滑な訴訟の運営の妨げとなるおそれがあるにとどまらず,訴訟の運営に具体的な支障が現実に生じている場合でなければ許されない。[№8]

ウ.報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき重要な判断の資料を提供し,国民の「知る権利」に奉仕するものであることから,事実の報道の自由は,思想の表明の自由と同様に憲法第21条の保障のもとにあり,報道が正しい内容を持つためには,報道のための取材の自由についても,憲法第21条の精神に照らし十分尊重に値する。[№9]

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答

ア:1 イ:2 ウ:1

本問は憲法21条の規定する表現の自由の範囲と限界に関する問題である。

本問アは、事実関係に誤りがある放送内容を放送法9条1項に基づく、訂正の請求に関する問題である。最高裁は、本規定(旧放送法4条1項)は、「真実でない事項の放送がされた場合において,放送内容の真実性の保障及び他からの干渉を排除することによる表現の自由の確保の観点から,放送事業者に対し,自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものであって,被害者に対して訂正放送等を求める私法上の請求権を付与する趣旨の規定ではないと解するのが相当である」と判示した(最判平成16年11月25日民集58巻8号2326頁)。したがって、本問アは正しい。

本問イは、法廷で傍聴人によるメモ行為がいかなる場合に制限・禁止されるかという問題である。最高裁は、情報摂取の自由を表現の自由の派生原理として位置づけ、その補助としてなされるメモを取る自由は憲法21条の精神に照らして尊重されるべきであり、公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるという特段の事情のない限り、故なく妨げてはならない、と判示した(最大判平成元年3月8日民集43巻2号89頁)。但し、同判決は、傍聴人のメモ行為が訴訟の運営を妨げることは通常はありえないとして、当該メモ行為の禁止は合理的根拠を欠くと判示した。本問イは、メモ行為の禁止・制限の要件として「訴訟の運営に具体的な支障が現実に生じている場合」を挙げている点で誤りである。

本問ウは表現の自由に照らし、報道の自由が認められるかどうかという問題である。最高裁は、「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがつて、思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法二一条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない」と判示した (最大決昭和44年11月26日刑集23巻11号1490頁、博多駅事件)。よって本問ウは正しい。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)179-84頁
  • 毛利透他『憲法Ⅱ』(2015年)226-7, 230-2頁
  • 憲法判例百選Ⅰ(第6版、2013年)77・78事件

〔第4問〕(配点:2)

憲法第22条第1項の解釈に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№10])

ア.農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みを採用したことの合憲性は,当該仕組みが国民の主食である米の生産の確保と稲作を行う自作農の経営の保護を目的とすることから,必要最小限度の規制であるか否かによって判断される。

イ.憲法第22条第1項は職業選択の自由を保障しているが,いわゆる営業の自由は,財産権の行使という側面を併せ有することから,同項及び第29条第1項の規定によって根拠付けられる。

ウ.職業の許可制は,狭義の職業の選択の自由そのものに制約を課す強力な制限であるため,社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置であっても,より緩やかな規制によってはその目的を十分に達することができない場合でなければ,合憲性を肯定し得ない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答:8

本問は、憲法21条1項が保障する職業選択の自由に関する問題である。

本問アは、農作物共済当然加入制の合憲性について争われた最判平成17年4月26日判時1898号54頁の内容を問うものである。最高裁は、最判昭和33年2月12日民集12巻2号190頁(国民健康保険強制加入事件)及び最大判昭和47年11月22日刑集26巻9号586頁(小売市場事件)を参照し、「当然加入制の採用は,公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができ,立法府の政策的,技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い」と判示した。よって、必要最小限度の規制を判断基準としている点で誤りである。

本問イは、職業選択の自由に含まれると解されている「営業の自由」の根拠を問う問題である。営業の自由の根拠に関しては、学説の対立があった。(1)それを22条に基礎づける学説においては、22条には職業を「選択する自由」と「遂行する自由」が含まれるが、「遂行する自由」については、他の憲法の条文に基礎づけ得る活動を除外すべきであり22条に係る職業は、主として営利を目的として自ら行うものであるから、社会通念上の「営業」がこれに当たり、営業の自由は職業選択の自由に含まれるとする説、(2)営業の自由には広狭二義があり、狭義は開業、営業の維持・存続、廃業の自由を内容とする「営業をすることについての自由」を意味し、広義は加えて「現に営業をしている者が、任意にその営業活動を行い得る自由」を意味し、前者は22条が、後者は29条(財産権の保障)により保障されるとする説がある。最高裁は、最大判昭和50年4月30日民集29巻4号572頁(薬事法距離制限事件)において、広狭二義とも22条1項によって保障されるとした。よって、本問イは、営業の自由が、22条1項及び29条によって根拠づけられるとしている点で誤りである。

本問ウに関して、最判平成4年12月15日民集46巻9号2829頁において、最高裁は、「職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法二二条一項の規定に違反するものということはできない」と述べているので、本問ウは適切ではない。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)224-241頁
  • 毛利透他『憲法Ⅱ』(2015年)255-271頁
  • 憲法判例百選Ⅰ(第6版、2013年)96・97・99事件

〔第5問〕(配点:2)

外国人の人権に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№11])

ア.地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするものについては,原則として日本国籍を有する者が就任することが想定され,外国人が就任することは想定されていない。

イ.我が国に在留する外国人のうち,永住者等でその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者についてであっても,法律をもって,地方公共団体の長,その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは,憲法上禁止されている。

ウ.基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き,外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきで,政治活動の自由についても,政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑み相当でないと解されるものを除き,その保障が及ぶ。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答:3

本問アは、外国人の参政権の範囲に関する問題である。最大判平成17年1月26日民集59巻1号128頁おいて、最高裁は、「地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの(公権力行使等地方公務員)については、原則として日本の国籍を有する者が就任することが想定されていると見るべきであり、外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、想定されていないという旨を示した。よって、本問アは正しい。

本問イは、外国人の選挙権に関する問題である。参政権について、公職選挙法は選挙権及び被選挙権を日本国民に限定する(9条・10条)。最高裁も、「国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法9条1項の規定が憲法15条、14条の規定に違反」しないとする(最判平成5年2月26日判時1452号37頁、ヒッグス・アラン事件)。他方で、地方自治体について最高裁は、最判平成7年2月28日民集49巻2号639頁において、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である」と述べて、市町村という住民の生活に最も密着した地方自治体レベルにおける選挙権は、永住資格を有する定住外国人に認めることができるとした。よって、本問イは誤りである。

本問ウは、外国人の政治活動の自由に関する問題である。最大判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁(マクリーン事件)において、最高裁は、「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である」とした。よって、本問ウは正しい。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)224-241頁
  • 毛利透他『憲法Ⅱ』(2015年)91-97頁
  • 憲法判例百選Ⅰ(第6版、2013年)1・2事件

〔第6問〕(配点:2)

生存権とこれを具体化した法制度に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№12])

ア.国民年金制度は,憲法第25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障上の制度であるから,同条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量にゆだねられており,著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱,濫用とみざるを得ないような場合を除いて,裁判所が審査判断するに適しない事柄であり,何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いがあっても,憲法第14条違反の問題は生じ得ない。

イ.憲法第25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は,きわめて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから,国の立法として具体化される場合にも,国の財政事情は考慮されるべきではない。

ウ.国は,難民条約の批准及びこれに伴う国会審議等を契機に,外国人に対する生活保護について一定の範囲で国際法及び国内公法上の義務を負うことを認めるに至ったものであり,少なくとも永住外国人にも憲法第25条第1項の保障が及ぶものとなったと解すべきであるから,生活保護法の適用対象となる「国民」には永住外国人も含まれる。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答:8

本問アは、立法措置が、25条の生存権と14条の平等権に違反するか否かの基準に関する問題である。最高裁は、最判平成元年3月2日訟月35巻9号1754頁において、「憲法二五条は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきこと(一項)並びに社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきこと(二項)を国の責務として宣言したものであるが[…]同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たつては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから、同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない事柄である」として、他方で、「憲法一四条一項は法の下の平等の原則を定めているが、右規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであつて、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないのである」とした。よって、本問アの前半は正しいが、後半は誤りである。

本問イは、前記最判平成元年3月2日訟月35巻9号1754頁が判示するように、25条を現実の立法として具体化するにあたって、国の財政事情を無視することができない、としているので、本問イは誤りである。

本問ウは、難民条約批准を理由に生活保護法の適用対象となる「国民」に永住外国人が含まれるかという問題である。福岡高裁平成23年11月15日判決(判タ1377号104頁)は、「難民条約等への加入及びこれに伴う国会審議を契機として,国が外国人に対する生活保護について一定の範囲で法的義務を負い,一定の範囲の外国人に対し日本国民に準じた生活保護法上の待遇を与えることを立法府と行政府が是認したものということができ,一定の範囲の外国人において上記待遇を受ける地位が法的に保護されることになったものである。また,生活保護の対象となる外国人の範囲を永住的外国人に限定したことは,これが生活保護法の制度趣旨を理由としていることからすれば,外国人に対する同法の準用を前提としたものとみるのが相当である。よって,一定の範囲の外国人も生活保護法の準用による法的保護の対象になるものと解するのが相当であり,永住的外国人である被上告人はその対象となるものというべきである」と判示した。他方で、上告審となる最高裁は、原審の判決を破棄、自判した。

 旧生活保護法は,その適用の対象につき「国民」であるか否かを区別していなかったのに対し,現行の生活保護法は,1条及び2条において,その適用の対象につき「国民」と定めたものであり,このように同法の適用の対象につき定めた上記各条にいう「国民」とは日本国民を意味するものであって,外国人はこれに含まれないものと解される。そして,現行の生活保護法が制定された後,現在に至るまでの間,同法の適用を受ける者の範囲を一定の範囲の外国人に拡大するような法改正は行われておらず,同法上の保護に関する規定を一定の範囲の外国人に準用する旨の法令も存在しない。したがって,生活保護法を始めとする現行法令上,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。

また、本件通知は行政庁の通達であり,それに基づく行政措置として一定範囲の外国人に対して生活保護が事実上実施されてきたとしても、そのことによって,生活保護法1条及び2条の規定の改正等の立法措置を経ることなく,生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく,[…]我が国が難民条約等に加入した際の経緯を勘案しても,本件通知を根拠として外国人が同法に基づく保護の対象となり得るものとは解されない。なお,本件通知は,その文言上も,生活に困窮する外国人に対し,生活保護法が適用されずその法律上の保護の対象とならないことを前提に,それとは別に事実上の保護を行う行政措置として,当分の間,日本国民に対する同法に基づく保護の決定実施と同様の手続きにより必要と認める保護を行うことを定めたものであることは明らかである。

以上によれば、外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権を有しないものというべきである。そうすると、本件却下処分は、生活保護法に基づく受給権を有しない者による申請を却下するものであって、適法である。

したがって、難民条約を批准したことを理由に、生活保護の対象が永住外国人にも及ぶとは解されないため、本問ウは誤りである。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)268-271頁
  • 毛利透他『憲法Ⅱ』(2015年)318-327頁
  • 憲法判例百選Ⅰ(第6版、2013年)6事件
  • 永野仁美「社会保障法判例」『季刊・社会保障研究』50巻4号464-472頁

〔第7問〕(配点:3)

憲法の意義に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[№13]から[№16])

ア.日本国憲法の前文は,国民主権,基本的人権の尊重,平和主義の3つの基本原理を明らかにしており,憲法の一部をなすものであって,当該規定を根拠に裁判所に救済を求めることができるという意味で,最高裁判所の判例においても裁判規範性が認められている。[№13]

イ.「憲法」が成文の憲法を指す場合に,「形式的意味の憲法」と呼ばれるが,この意味の憲法は,その内容において人権保障に関する規定が含まれているかどうかを問わない。[№14]

ウ.国家であれば,権力の組織や構造が定まっていると考えられ,この意味では全ての国家は憲法を持つと言われるが,この場合の「憲法」は,「固有の意味の憲法」と呼ばれる。[№15]

エ.1789年フランス人権宣言第16条において,権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,全て憲法を持つものではない旨が示されているが,この場合の「憲法」は,「立憲的意味の憲法」あるいは「近代的意味の憲法」と呼ばれる。[№16]

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答

ア:2 イ:1 ウ:1 エ:1

本問アは、日本国憲法前文の内容と裁判規範性に関する問題である。前文1項の前段は、「主権が国民に存すること」として国民主権の原理を表明する。また、「自由のもたらす恵沢」の確保と「戦争の惨禍」からの解放という、人権と平和の二原理を宣言する。2項は、「日本国民は、恒久の平和を念願」するとして、平和主義への希求を述べ、そのための態度として、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言する。しかし、前文は裁判規範としての性格を有しないと解されている。裁判規範とは、裁判所が具体的な争訟を裁判する際に判断基準として用いることのできる法規範のことである。前文の規定は抽象的な原理の宣言にとどまるものである。したがって、本問アの前半は正しいが、後半は誤りである。

本問イに関して、形式的意味の憲法とは、憲法という名で呼ばれる成文の法典を意味する。この意味での憲法は、その内容がどのようであるかは問わないので、人権保障に関する規定を含むかどうかは問題ではない。よって本問イは正しい。

本問ウは、実質的意味での憲法における固有の意味の憲法に関する問題である。実質的意味の憲法には2つの意味が存在する。第一に固有の意味での憲法である。これは、国家の統治の基本を定めた法としての憲法であり、国家の機関、権力の組織と作用及び相互の関係を規律する規範である。第二に立憲的意味での憲法である。これについては、後に説明する。よって、本問ウは正しい。

本問エに関して、立憲的意味での憲法は、自由主義に基づいて定められた国家の基礎法である。これは、18世紀末の近代市民革命期に主張された、専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという立憲主義に由来するものであり、1789年フランス人権宣言の16条において示されている。よって、本問エは正しい。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)4-5, 35-38頁

〔第8問〕(配点:3)

選挙権及び選挙制度に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№17]から[№19])

ア.憲法は,国民主権の原理に基づき,国民に対して,両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利の保障は認めているが,投票をする機会の平等までは保障していない。[№17]

イ.選挙運動の一つの手段である政見放送において,政見放送の品位を損なう言動を禁止した公職選挙法第150条の2の規定に違反する言動がそのまま放送される利益は,法的に保護された利益とはいえず,したがって,上記言動がそのまま放送されなかったとしても,法的利益の侵害があったとはいえない。[№18]

ウ.憲法は,両議院の議員の選挙において投票をすることを,一定の年齢に達した国民の固有の権利として保障しており,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない。[№19]

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答

ア:2 イ:1 ウ:1

本問アに関して、最高裁は、最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁において、「憲法は,国民主権の原理に基づき,両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を国民に対して固有の権利として保障しており,その趣旨を確たるものとするため,国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものと解するのが相当である」と判示して、投票する機会の平等を認めた。よって、本問アは誤りである。

本問イは、最判平成2年4月17日民集44巻3号547頁(政見放送削除事件)に関する問題である。事実と判旨は以下の通りである。

【事実】

X1は、昭和58年6月26日の参議院比例代表選出議員選挙において、政治団体X2の政権の録画を行った。その中で、「めかんち、ちんば」といった差別的表現が使用されていたことから、Y1(NHK)は、当該部分を削除することについてX1の同意を求めたが、X1が拒否した。Y1は、自治省行政局選挙部長に削除の是非について照会し、削除は法に違背しない旨の回答を得たので、当該部分を削除し放送した。Xらは、Y1の削除行為および自治省行政局選挙部長の回答は、公職選挙法150条1項(衆議院議員の選挙においては、候補者届出政党は、政令で定めるところにより、選挙運動の期間中日本放送協会及び基幹放送事業者のラジオ放送又はテレビジョン放送の放送設備により、公益のため、その政見を無料で放送することができる。この場合において、日本放送協会及び基幹放送事業者は、その録音し若しくは録画した政見又は候補者届出政党が録音し若しくは録画した政見をそのまま放送しなければならない。)に違反するとして、Xらの政見放送権を侵害した不法行為であるとして、Y1およびY2(国)に対し損害賠償請求訴訟を提起した。

一審は損害賠償請求を一部認容。二審は請求棄却。Xが上告。

【判旨】

 上告棄却。

本件削除部分は、多くの視聴者が注目するテレビジョン放送において、その使用が社会的に許容されないことが広く認識されていた身体障害者に対する卑俗かつ侮蔑的表現であるいわゆる差別用語を使用した点で、他人の名誉を傷つけ善良な風俗を害する等政見放送としての品位を損なう言動を禁止した公職選挙法150条の2の規定に違反するものである。そして、右規定は、テレビジョン放送による政見放送が直接かつ即時に全国の視聴者に到達して強い影響力を有していることにかんがみそのような言動が放送されることによる弊害を防止する目的で政見放送の品位を損なう言動を禁止したものであるから、右規定に違反する言動がそのまま放送される利益は 法的に保護された利益とはいえず、したがつて、右言動がそのまま放送されなかつたとしても、不法行為法上、法的利益の侵害 があったとはいえないと解すべきである

したがって、本問イは正しい。

本問ウに関して、最高裁は、最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁において、「憲法の以上の趣旨にかんがみれば,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選挙権について一定の制限をすることは別として,国民の選挙権又はその行使を制限することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならない」と判示した。よって、本問ウは正しい。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)263-266頁
  • 毛利透他『憲法Ⅱ』(2015年)360-368頁
  • 憲法判例百選Ⅰ(第6版、2013年)152・162事件

〔第9問〕(配点:2)

憲法第9条の解釈に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№20])

ア.憲法第9条第1項について,侵略戦争を放棄したものであり,自衛戦争を放棄したものではないという考え方に立ったとしても,同条第2項前段によって第1項の目的を達成するために一切の戦力の保持が禁止されており,同条第2項後段によって交戦権も否認されているとの考え方に立てば,結果として自衛のための戦争も放棄されていることになる。

イ.戦争はおよそ国際紛争解決の手段として行われるものであり,その目的のいかんを問わず憲法第9条第1項により放棄されているという考え方に立ったとしても,同条第2項の「前項の目的を達するため」につき,戦力不保持を定めるに至った動機を示すものとの考え方に立てば,結果として自衛のための戦争は認められていることになる。

ウ.憲法第9条第1項について,侵略戦争を放棄したものであり,自衛戦争を放棄したものではないという考え方に立った場合,第9条第2項の「交戦権」につき,交戦国に国際法上認められる権利と考えるか,国として戦いを交える権利と考えるかに関わらず,自衛のための戦争は認められていることになる。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答:4

本問は、憲法9条の解釈に関する問題である。9条1項の解釈には、(1)9条1項で放棄されているのは侵略戦争であり、自衛戦争は放棄されていないと解する説、(2)9条1項では、自衛戦争を含むすべての戦争が放棄されていると解する説がある。(1)説に立ったとしても、9条2項では、一切の戦力の保持が禁止され、交戦権も否認されていると解釈すれば、自衛のための戦争を行うことができず、結果としてすべての戦争が禁止されると解される。よって、本問アは正しい。また、9条1項でいかなる目的の戦争をも放棄したと解すると、自衛戦争をも放棄したと解されるため、本問イは誤りである。また、9条2項における「交戦権」の意味については、(1)国家が戦争を行う権利とする説と、(2)戦争の際国際法上交戦国に認められている諸権利とする説がある。9条1項は、侵略戦争を放棄したものであり、自衛戦争を放棄したものではないという考え方に立った場合において、交戦権の内容が(1)、(2)何れであっても、自衛戦争に伴う敵国兵力の殺傷、敵国領土への砲撃、船舶の臨検・拿捕などが交戦権に当たらないとは考えにくいため、結局、自衛戦争は認められないと解されてしまう。よって、本問ウは誤りである。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)263-266頁
  • 佐藤幸治『日本国憲法論』(2015年)90-101頁

〔第10問〕(配点:3)

内閣及び内閣総理大臣に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№21]から[№23])

ア.憲法は閣議について規定していないが,内閣が行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負うとする憲法第66条第3項の趣旨により,会合しないで文書を各大臣間に持ち回って署名を得る持ち回り閣議は許されないとされている。[№21]

イ.内閣の総辞職について規定している憲法第70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」とは,内閣総理大臣が死亡した場合のほか,憲法第58条第2項に基づき内閣総理大臣が除名により国会議員の地位を失った場合に限られる。[№22]

ウ.憲法第73条第6号は,内閣の政令制定権を規定しているところ,法律を執行するための必要な細則を定める執行命令及び法律が政令に委任した事項を定める委任命令は許されるが,既存の法律に代替する内容を定める代行命令は許されない。[№23]

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答

ア:2 イ:2 ウ:1

本問アに関して、閣僚が実際に会同することなく、閣議案件を記した閣議書を各閣僚に回覧してその押印をもって閣議決定とする持回り閣議も「閣議」として認められている。よって、本問アは誤りである。

本問イに関して、憲法70条にいう「内閣総理大臣が欠けたとき」とは、総理大臣が死亡した場合、除名(58条2項)、資格争訟の裁判(55条)などによって国会議員の地位を失った場合、及び、内閣総理大臣の自発的辞職などである。よって、本問イは誤りである。

本問ウは、内閣の政令制定権に関する問題である。法律が委任した事項を定める委任命令は認められるが、代行命令は、国会が唯一の立法機関である意義が失われるため、認められない。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)322-330頁
  • 佐藤幸治『日本国憲法論』(2015年)434, 493-495頁

〔第11問〕(配点:2)

裁判所の違憲審査に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№24])

ア.裁判所は,処罰対象となる行為が過度に広汎であることが争われている罰則の合憲性の判断に当たり,その規制目的や当該目的達成の手段としての合理性等を審査する場合がある。

イ.合憲限定解釈は,合憲性が争われている法令について法令違憲との判決を下すことを回避する手段の一つである。

ウ.合憲的な適用であることが明らかである場合には,適用された法令に合憲的に適用できる部分と違憲的に適用される可能性のある部分とが不可分の関係で含まれていたとしても,法令違憲と判断する余地はないことになる。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答:2

本問アは正しい。

本問イは、合憲限定解釈に関する問題である。合憲限定解釈とは、法律の解釈として複数の解釈が可能な場合には、憲法に適合する解釈が採られなければならないという準則のことをいい、法律の違憲判断を回避する手法である。よって、本問イは正しい。

本問ウに関して、法令の合憲限定解釈ができない場合、すなわち合憲的に適用できる部分と違憲的に適用される可能性のある部分とが不可分の関係にある場合に、法令の中の違憲的適用部分が、重大な人権侵害を引き起こし、こうした部分が存在することは法令を制定した趣旨を没却することから、法令全体が違憲となるという場合がある。よって、本問ウは誤りである。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)377-392頁
  • 福井康佐「適用違憲における三類型説の再検討」『大宮ローレビュー』第7号51-82頁

〔第12問〕(配点:2)

憲法改正に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[№25])

ア.憲法改正には,国民投票において「その過半数の賛成」を必要とするとされているが,日本国憲法の改正手続に関する法律によって,「その過半数」とは,有権者総数の過半数を意味するとされている。

イ.憲法第96条第2項は,国民の承認を経た憲法改正について,「直ちにこれを公布する」と定めているが,ここで「直ちに」とされているのは,公布を恣意的に遅らせてはならないことを定めたものである。

ウ.憲法を始源的に創設する「憲法制定権力」と憲法によって与えられた「憲法改正権」とは同質であるとの見解は,憲法改正の限界について理論上限界はないとする立場の根拠となり得る。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○

4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×

7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

出典:法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/content/001225192.pdf)

解答:5

本問アに関して、承認の要件とされる「過半数」とは、有効投票の過半数と解されている。よって、本問アは誤りである。

本問イは正しい。

本問ウに関して、憲法改正権と憲法制定権力を同一視しかつ制定権力の全能性を肯定すれば、憲法改正における限界が存在しないと解されるため、本問ウは正しい。

参考

  • 芦部信喜『憲法』(第6版、2015年)329-400頁
  • 佐藤幸治『日本国憲法論』(2015年)35-41頁

[1] 婚姻関係のない男女の間に生まれた子。

[2] 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

参考書籍

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