有価証券報告書とは

株式などの有価証券を発行している会社は,有価証券報告書を作成する必要があります.その記載内容は法律によって規定されています.

なぜ有価証券報告書が必要なのか

証券取引法は,国民経済の適切な運営及び投資家の保護に資するため,有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ,且つ,有価証券の流通を円滑ならしめることを目的としていました(証券取引法1条).そこで,投資家保護のため,証券発行者には,定期的な開示が要求されるのです.これを継続開示と言います.

有価証券報告書を作成しなければならない会社

すべての会社が有価証券報告書を作成しなければいけないというわけではありません.有価証券報告書を作成しなければならない会社については,金融商品取引法第24条1項が規定します.

有価証券の発行者である会社は、その会社が発行者である有価証券(特定有価証券を除く。次の各号を除き、以下この条において同じ。)が次に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、内国会社にあつては当該事業年度経過後三月以内(やむを得ない理由により当該期間内に提出できないと認められる場合には、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた期間内)、外国会社にあつては公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める期間内に、内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、当該有価証券が第三号に掲げる有価証券(株券その他の政令で定める有価証券に限る。)に該当する場合においてその発行者である会社(報告書提出開始年度(当該有価証券の募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文若しくは第三項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けることとなつた日の属する事業年度をいい、当該報告書提出開始年度が複数あるときは、その直近のものをいう。)終了後五年を経過している場合に該当する会社に限る。)の当該事業年度の末日及び当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度すべての末日における当該有価証券の所有者の数が政令で定めるところにより計算した数に満たない場合であつて有価証券報告書を提出しなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けたとき、当該有価証券が第四号に掲げる有価証券に該当する場合において、その発行者である会社の資本金の額が当該事業年度の末日において五億円未満(当該有価証券が第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等である場合にあつては、当該会社の資産の額として政令で定めるものの額が当該事業年度の末日において政令で定める額未満)であるとき、及び当該事業年度の末日における当該有価証券の所有者の数が政令で定める数に満たないとき、並びに当該有価証券が第三号又は第四号に掲げる有価証券に該当する場合において有価証券報告書を提出しなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして政令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
一  金融商品取引所に上場されている有価証券(特定上場有価証券を除く。)
二  流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券(流通状況が特定上場有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券を除く。)
三  その募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文若しくは第三項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く。)
四  当該会社が発行する有価証券(株券、第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等その他の政令で定める有価証券に限る。)で、当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度のいずれかの末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上(当該有価証券が同項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等である場合にあつては、当該事業年度の末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上)であるもの(前三号に掲げるものを除く。)

非常に長い条文ですが,まとめると以下の通りになります.

  1. 証券取引所に上場されている有価証券
  2. 日本証券業協会に登録された店頭売買有価証券
  3. その募集または売り出しについて有価証券届出書または有価証券登録追補書類を提出した有価証券
  4. 事業年度末および前4事業年のいずれかにおいて株主数が500名以上になったことのある会社

以上の,会社及び有価証券の発行者は,有価証券報告書を,事業年度経過後3か月以内に,内閣総理大臣に提出しなければなりません.

有価証券報告書の記載内容

有価証券報告書の記載内容は以下の通りです.

第一部 企業情報

第1 企業の概況

1.主要な経営指標等の推移

2.沿革

3.事業の内容

4.関係会社の状況

5.従業員の状況

第2 事業の状況

1.業績等の概要

2.生産,受注及び販売の状況

3.対処すべき課題

4.事業等のリスク

5.経営上の重要な契約等

6.研究開発活動

7.財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況

第3 設備の状況

1.設備投資等の概要

2.主要な設備の状況

3.設備の新設,除去等の計画

第4 提出会社の状況

1.株式等の状況

2.自己株式の取得等の状況

3.配当の政策

4.株価の推移

5.役員の状況

6.コーポレート・ガバナンスの状況

第5 経理の状況

1.連結財務諸表等

2.財務諸表等

第6 提出会社の株式事務の概要

第7 提出会社の参考情報

第二部 提出会社の保証会社等の情報

第1 保証会社情報

第2 保証会社以外の会社の情報

第3 指数等の情報

監査報告書

確認書(原則任意の書類)

有価証券報告書の信頼性を高める方策

有価証券報告書については,情報の正確性,公平性への疑いから,信頼性を担保する取組がなされています.

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金融庁による適正性の確認制度

金融商品取引法の下では,上場会社等に対して,有価証券報告書の記載内容に関する確認書の提出が義務づけられています(金融商品取引法24条の4の2第1項).

第二十四条第一項の規定による有価証券報告書を提出しなければならない会社(第二十三条の三第四項の規定により当該有価証券報告書を提出した会社を含む。次項において同じ。)のうち、第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、内閣府令で定めるところにより、当該有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した旨を記載した確認書(以下この条及び次条において「確認書」という。)を当該有価証券報告書(第二十四条第八項の規定により同項に規定する有価証券報告書等に代えて外国会社報告書を提出する場合にあつては、当該外国会社報告書)と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。

確認書とは,有価証券報告書の開示書類の記載内容が,金融商品取引法に基づき適正であることを確認した旨を記載したもののことです.かつての,確認書の制度は,任意の制度にとどまり,提出は発行会社の判断に委ねられるため,実効性に欠けるとの指摘がありました.しかし,有価証券報告書の虚偽記載に関する事件が相次いだことを契機に,ディスクロージャーの信頼性を確保する制度を構築することが求められました.具体的に次の2点が義務付けられました.

  1. 財務報告についての内部統制の有効性に関する経営者による評価と結果の開示
  2. 1.についての公認会計士による監査

金融商品取引法では,これらを実現するために確認書の提出が義務化されました.

東京証券取引所の適時開示に係る宣誓書と確認書制度

上場会社は自身の会社情報の開示が適正であることを誠実に保証しなければならず,上場会社は,常に投資者の視点に立った迅速,正確かつ公平な会社情報の開示を徹底するなど誠実な業務遂行に努めることについて真摯な姿勢で臨む旨を宣誓した宣誓書,及び,その添付書類として適時開示に係る社内体制の状況を記載した適時開示体制概要書の提出が求められます.

しかし,2010年の制度変更に伴って適時開示に係る宣誓書は取引所規則の遵守に関する確認書へ,適時開示体制概要書はコーポレート・ガバナンス報告書の内容とすることとなり,適時開示に係る宣誓書制度は終焉を迎えたと言えます.

監査制度

公認会計士等の監査意見を独立監査人の監査報告書として添付することで,当該有価証券報告書の適切性を証明します.

検査制度

財務局による審査が行われます.

有価証券報告書の訂正

有価証券報告書に記載漏れ,記載不十分,虚偽記載がある場合,発行会社が訂正報告書を提出します.

課徴金制度

有価証券報告書,その添付書類,訂正報告者に虚偽の記載をし,開示義務違反をした会社には課徴金の支払が課せられます(金融商品取引法172条の2第1項).

重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている発行開示書類を提出した発行者が、当該発行開示書類に基づく募集又は売出し(当該発行者が所有する有価証券の売出しに限る。)により有価証券を取得させ、又は売り付けたときは、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該発行者に対し、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額(次の各号のいずれにも該当する場合は、当該各号に定める額の合計額)に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

刑事罰・課徴金

もし有価証券報告書に虚偽記載がある場合には,刑事罰や課徴金の対象となります.具体的には,金融商品取引法197条1項が規定します.

次の各号のいずれかに該当する者は,十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する.

1号は,「有価証券報告書若しくはその訂正報告書であつて,重要な事項につき虚偽の記載のあるものを提出した者」と規定し,有価証券報告書または訂正報告書に虚偽の記載をした者を刑事罰の対象としています.

また,違反者(個人)だけでなく,法人に対しても罰則が科されます.

法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む.以下この項及び次項において同じ.)の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務又は財産に関し,次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは,その行為者を罰するほか,その法人に対して当該各号に定める罰金刑を,その人に対して各本条の罰金刑を科する.

損害賠償

有価証券報告書に虚偽記載がある場合に,会社はその有価証券を募集・売出しによらずに取得した者に対して損害賠償責任を負います(金融商品取引法21条の2).発行会社は,有価証券報告書の虚偽記載につき,無過失責任を負います.損害額については,金融商品取引法21条の2第3項により一定の場合に推定されます.

当該書類の虚偽記載等の事実の公表がされたときは,当該虚偽記載等の事実の公表がされた日(公表日)前1年以内に当該有価証券を取得し,当該公表日において引き続き当該有価証券を所有する者については,損害額が推定されます.

推定額=公表日前1月間の平均市場価額ー公表日後1月間の平均市場価額

 但し,次の2つの要件を満たす場合は,裁判所が適切な額を認定します.

  1. 請求権者が受けた損害の全部又は一部が,虚偽記載等によって生ずべき証券の値下り以外の事情により生じたことが認められる.
  2. その事情により生じた損害の性質上,その額を証明することが極めて困難である.

まとめ

有価証券報告書は,会社の公正及び透明性を保つために非常に重要な書類となります.株主は有価証券報告書を参考に株式を購入するため,その内容も公正なものであることが求められます.企業の不祥事が多い昨今,有価証券報告書の作成者,有価証券報告書を監査する公認会計士や監査法人には,より高いコンプライアンスの精神が求められます.

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