定款に定められた目的

定款の目的

会社は定款所定の目的の範囲内で行動することが法律で義務付けられているが、現代社会においては、様々な会社が存在し、会社には社会からの多様なニーズに応えることも必要となってきます。果たしてどの程度の行為が許容されるのでしょうか。

法人は、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲の行為において権利を有し、義務を負います(民法34条)。会社も法人であるから、その権利能力は定款記載の目的に限定されます。この規定によれば、法人(会社)が行う行為が定款の目的の範囲外である場合は、その行為は相手方の善意悪意にかかわらず、無効となります。

判例

しかし、法人あるいは会社の活動を定款の目的の範囲内に限局すると、取引の安全が損なわれ、事業活動に弊害をもたらすおそれがあります。そのため、我が国の判例法理は、定款の目的の範囲内の行為とは、定款に明示されたものだけでなく、目的を遂行するために必要な行為も含まれるとしています。

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最判昭和27年2月15日

例えば、最判昭和27年2月15日においては、A社団の社員であるCが、A社団を代表し、A社団所有の建物をXに売却した行為が、定款記載の目的である「不動産その他財産を保存し、これが運用利殖に図ること」の範囲内の行為であるかが問題となりました。

最高裁は、この点について、「財産の運用利殖を計るためには、時に既有財産を売却することもあり得る」として、定款の目的から推理演繹しうる行為も含むとしています。さらに、「仮りに定款に記載された目的自体に包含されない行為であつても目的遂行に必要な行為は、また、社団の目的の範囲に属する」として会社の目的を達成するために必要な行為をも定款の目的の範囲内に含まれるとしています。

本判決の意味するところは、本人が定款記載の目的だと意図して行ったという主観的な評価をせず、客観的に見て定款記載の目的に必要であれば、それは定款の目的の範囲内だとしています。

八幡製鉄事件(最大判昭和45年6月24日)

八幡製鉄事件では、会社による特定の政治団体への献金が、定款の目的に反するかが争われました。最高裁は、定款の目的に反しないと判示しました。

最高裁は上記の最判昭和27年2月15日を参照し、次のように述べました。

会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、 目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする。そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であつたかどうかをもつてこれを決すべきではなく、行為の客観 的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである。

最高裁は、定款の目的の範囲内の行為について一般的に述べ、その判断基準を提示しました。

 ところで、会社は、一定の営利事業を営むことを本来の目的とするものであるから、会社の活動の重点が、定款所定の目的を遂行するうえに直接必要な行為に存することはいうまでもないところである。しかし、会社は、他面において、自然人と ひとしく、国家、地方公共団体、地域社会その他(以下社会等という。)の構成単位たる社会的実在なのであるから、それとしての社会的作用を負担せざるを得ないのであつて、ある行為が一見定款所定の目的とかかわりがないものであるとしても、会社に、社会通念上、期待ないし要請されるものであるかぎり、その期待ないし要 請にこたえることは、会社の当然になしうるところであるといわなければならない。 …… したがつて、これらの行為が会社の権利能力の範囲内にあると解しても、なんら株 主等の利益を害するおそれはないのである。

そして、会社が社会の構成単位である社会的実在であることを強調し、一見して定款の目的と関係がない行為でも、会社が社会通念上、要請されるものであれば許容されるとしました。

 政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。したがつて、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても例外ではないのである。……要するに、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。

具体的に政党の健全な発展が、国民の重大な関心事であり、会社にとってもそれに協力することの重要性を強調し、政治献金が、会社の社会的役割を果たすためである限りにおいては、定款の目的の範囲内にあると判示しました。そして、本件における政治献金も許容されるとして原告の上告を棄却しました。

本判決の立場は、その後の裁判例においても踏襲されているが、批判も多いです。代表的な批判は、本判決は、実質的には、会社の行為は定款の目的に制限されないと評価することができるということであります。それは、会社の社会的役割である行為ならば、定款の目的の範囲内とされるためであるからです。


今日会社が果たす役割は非常に大きくなっており、会社は自身のイメージアップのためにも災害の慈善活動や福祉事業などを行うことは当然であり、会社の役割を定款の目的に限るのは実際上不可能であると考えられます。会社の社会的役割を強調し、その社会的役割を果たすための行為は定款の目的の範囲内であるとした判例は、今日の実体に即していますが、法人の目的の範囲を制限する民法34条の規定が形骸化してしまうという問題を抱えています。

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