共謀罪の問題点-民主的社会の崩壊

犯罪を計画段階から処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法が15日朝、参院本会議で成立した。自民、公明両党が委員会採決を省略できる「中間報告」の手続きを使って一方的に参院法務委員会の審議を打ち切り、本会議採決を強行。異例の徹夜国会の末、与党や日本維新の会などの賛成多数で可決した。投票総数235票のうち、賛成が165票、反対が70票だった。

出典:朝日新聞デジタル(http://www.asahi.com/articles/ASK6H0PKHK6GUTFK02F.html)

京都大学の高山佳奈子教授をはじめとする多くの刑事法研究者の批判((http://www.kt.rim.or.jp/~k-taka/kyobozai.html))があったにもかかわらず、共謀罪法案が可決された。では、共謀罪立法の問題点とは一体何であり、政府が狙いとする共謀罪の対象とはどのようなものなのだろうか。

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共謀罪とは

共謀罪の意義

ある行為が刑罰の対象とされるのは、犯罪構成要件に当てはまり、かつ、違法性阻却事由((正当防衛など違法性を否定する事由))や責任阻却事由((心神喪失など責任を否定する事由))が存在しない場合である。これは、ドイツの刑法学者アンゼルム・フォイエルバッハの「法律なければ犯罪なし、法律なければ刑罰なし」という言葉に裏付けられる。これは、罪刑法定主義と犯罪構成要件の人権保障機能を端的に表す。

共謀罪とは、犯罪が成立する要件のレベルを大幅に引き下げ、共謀の段階から処罰ができるようにするものである。実際に犯罪の実行に着手せずとも、その準備を行うなど犯罪を共同して行う目的の合意と見なされる行為があれば、処罰の対象とされる。共謀罪による処罰対象の引き下げは、犯罪構成要件の人権保障機能を破壊し得る

立法の経緯

2000年11月に第55回国連総会で国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(United Nations Convention against Transnational Organized Crime)が決議された。同条約は、2003年5月に国会で承認され、この条約批准のために共謀罪の制定が必要か否かを巡って議論が繰り広げられていた。

2003年の政府案の内容は、次の通りである。(1)長期4年以上の刑を定める犯罪について、(2)団体の活動として、対象となる犯罪行為を実行するための組織により行われるもの、(3)処罰対象は、遂行を共謀した者、(4)刑期は、原則懲役2年以下、(5)犯罪の実行着手前に自首したときは、刑は減免される。

2006年、民主党は長期5年の刑期を超える犯罪を対象とし、対象犯罪を約300に減らし、準備行為を要件とし、犯罪の越境性と組織犯罪集団の関与を要件とする第二次修正案を提案した。

2007年2月、自民党の法務部会「条約刑法検討に関する小委員会」は、共謀罪をテロ等謀議罪に改称することなどをその内容とする提案を了承。

2009年、民主党は「マニフェスト2009」において、共謀罪法案を成立させることなく国際組織犯罪防止条約を批准する方針を示した。

2011年9月、平岡秀夫氏が法務大臣に就任し、11月7日、法務省の関係部局に対して、共謀罪に関する状況調査及び共謀罪法案に関する立法指針の検討を指示。

2012年、自公連立政権が発足。

2016年8月、政府が共謀罪創設規定を含む法案の再提出を検討。

新法案においては、(1)名称を「テロ等組織犯罪準備罪」とする、(2)適用対象を「団体」とされていたものを「組織的な犯罪集団の活動」とし、団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が長期4年以上の刑が定められている罪を実行することにある団体と定義され、(3)犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし、(4)「その計画をした者のいずれかによりその計画にかかる犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の当該犯罪の実行の準備行為が行われたとき」という要件を付すとされた。

共謀罪 成立の経緯
2000年11月 国連総会で国際組織犯罪防止条約を採択。
2002年9月 森山真弓法相が共謀罪新設の検討を法制審議会に諮問。
2003年3月 政府が法案を国会に提出(1回目、廃案)。
2004年2月 政府が法案を再提出(2回目、廃案)。
10月 政府が法案提出(3回目、廃案)。
2016年8月 政府が共謀罪創設規定を含む法案の再提出を検討。
2017年3月21日 4回目の閣議決定、テロ等準備罪として。
2017年6月15日 改正組織的犯罪処罰法成立

犯罪とされる活動

共謀罪によって犯罪とされる活動には以下のものが想定される。

基地建設に抵抗する市民団体が、工事を阻止するため道路に座り込みを計画し、現地の地理を調べたり、現地に行くための航空券の手配・購入を行う。 組織的威力業務妨害罪の共謀罪
新聞社が、戦争法発動の準備が疑われる安全保障会議を構成する大臣の自宅に記者を張り付かせ、取材拒否にあっても事実関係の確認を必ず求めることを編集会議で決定し、記者がその大臣の自宅の割り出し作業を始める。 組織的強要罪の共謀罪・特定秘密取得罪の共謀罪
衆議院選挙の終盤、苦戦を伝えられる現職議員の選対会議で、電話作戦の強化を話し合い、選対メンバーの会社社長に、社員にアルバイト代を支払ってでも1人50本ずつ電話を掛けさせてくれと依頼してその承諾を得、電話掛け用の名簿調達のために支持者に連絡を始める。 公職選挙法違反、多数人買収罪の共謀罪
上場企業である大手電機会社の役員らが、株価を維持する目的で会社の業績不振の実態を隠すために、利益を上乗せした有価証券報告書を作成すること部下に命じる。 金融商品取引法違反の共謀罪
市民団体が自衛隊官舎に「殺すな」と書かれたステッカ-を貼り付けることを計画し、そのステッカーを買うためにATMから出金する。 組織的建造物損壊罪の共謀罪
イスラエルに爆撃されたパレスチナのハマスが関与する学校と病院の再建のための募金活動を計画し、ネットで現地状況を調査し始める。 テロ資金供与防止法違反の共謀罪
大学のサークルのチラシを作成のための画像を雑誌の切り抜きやインターネット上の画像を使用することを計画する。 著作権法違反の共謀罪
痴漢冤罪の現場に遭遇したため、冤罪に取り組む市民団体と協力して法廷での証言を引き受ける。 偽証の共謀罪

以上のような行為が共謀罪とされる可能性があり、テロとは全く関係のないような犯罪をも処罰の対象となり得る。