性犯罪の非親告化-厳罰化に向けた取り組み

法相の諮問機関、法制審議会の性犯罪部会は16日、性犯罪の非親告罪化や厳罰化に向けた改正案の要綱案を賛成多数でとりまとめた。早ければこの秋の法制審総会を経て法相に答申する。

引用:産経ニュース(http://www.sankei.com/affairs/news/160616/afr1606160012-n1.html

法制審議会において性犯罪の厳罰化および非親告化についての要綱案が採択された。そもそも、親告罪とは何か、それがなぜ厳罰化と関連しているのか、以下見ていくこととする。

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親告罪とは

親告罪とは、訴追の要件として告訴を必要とする犯罪のことである。つまり、被害者等が警察や検察官に対し犯罪事実を申告し,その訴追を求める意思表示をしなければ、訴訟を提起することができず、裁判所で事件を審理することができない犯罪のことをいう。

例えば、殺人罪(刑法199条)は非親告罪で被害者が告訴せずとも、検察官が裁判所に提訴し、犯罪事実について審理する。一方で、強姦罪(180条)や器物損壊罪(261条)は親告罪である。強姦罪が親告罪とされる理由は、被害者の名誉を尊重することであり、器物損壊罪が親告罪とされる理由は、軽微な犯罪であるためである。

強姦罪等の性犯罪が親告罪とされる理由は、被害者のプライバシー保護や名誉を尊重することである。犯罪の非親告化は、検察官が当事者の訴追の意思の有無に関わりなく、起訴することができるため、すべての犯罪を裁判にかけることができるというメリットがある。一方で、当事者の意思を蔑ろにし、プライバシーや名誉が十分に保護されないおそれがあるというデメリットも存在する。

性犯罪について

性犯罪のすべてが非親告罪とされているわけではない。

集団強姦罪について定める刑法180条は次のように規定する。

第176条から第178条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第176条若しくは第178条第1項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。
強制わいせつ・強姦等の罪の被害者は、犯人が訴追されることによって捜査・公判手続きに参加することを余儀なくされ、名誉その他の点で社会生活上の不利益を被るおそれがあり、親告罪とされている。一方で、集団強姦等罪およびこれらの罪の未遂罪、及び、二人以上の者が現場において共同して犯した強制わいせつ、準強制わいせつ罪及びこれらの未遂罪については、その悪質性及び一般予防に鑑み、非親告罪とされている。

性犯罪の非親告化のメリット・デメリット

性犯罪について厳罰化を行うとなると、一般予防という観点がより重要になってきます。一方で被害者保護という観点が軽視されてはならない。2015年の「性犯罪の罰則に関する検討会」では、性犯罪の非親告化に関して、以下のような積極的意見と消極的意見が挙げられている。

積極的意見

  • 事件にするかどうかを、相手の処罰を求めるかどうかという立件、訴追という手続進行上の責任ないしイニシアティブを被害者が負うことは、負担が大きいところ、非親告化によりその負担がなくなる
  • 強姦罪が重大な犯罪なのだということを国民に認識させることができる。
  • 強姦罪等の中には、微妙な人間関係のコミュニケーション・ギャップに起因する事例もあり、そのような場合に当人の意思を無視し、捜査・公判に付すのは適切でないという意見もあるが、一方でコミュニケーション・ギャップに起因しない事例も多くあり、そのような被害者が、「あなたが決めないと公訴提起できない」と言われることは不合理であり負担が大きい。
  • 被害者は、加害者を罰してほしいという気持ちや自分の身に起きたことは犯罪だと認識してほしいという気持ちは持っているものの、刑事手続で傷つくことを恐れて告訴しないという方が多いと思われる。しかし、刑事手続で傷つくという問題は、親告罪であるか非親告罪であるかという問題よりも、刑事手続き上の配慮のされ方の問題である
  • 被害者が、加害者側の弁護人から示談金と引き換えに告訴の取消しを迫られ、法的知識のない被害者が怖くなって告訴を取り消すことがある。非親告化により、加害者が親告罪の制度を有利な武器として使うことを防ぐことができる
  • 被害者が年少者で、その法定代理人である実母の夫や交際相手が加害者であるような強姦の事例において、法定代理人である実母がその夫や交際相手と別れたくないがために、当該強姦について告訴しないという場合がある。非親告罪化すると、そのような場合に加害者の罪を問いやすくなることが期待される。

消極的意見

  • 被害者の意思に反する起訴がなされる可能性がある。
  • 性の問題は、人間同士のコミュニケーションの問題でもあり、被害者が被害を公にすることによって自己の人間関係にダメージを受けることを避けるために、捜査をしないでほしいと望むケースもある。
  • 非親告罪である強姦致死等の事件であっても、示談成立により起訴猶予となることも多いので、弁護人空の示談の働きかけは、親告罪であるか否かにかかわらず、行っている。

厳罰化との関連で

非親告化による問題としては、やはり被害者の意に反する提訴がなされてしまうという点が大きく、一方で、非親告化により、被害者の提訴を行う負担を減らすなど、被害者に資する面もある。

そして何よりも重要なのは、性犯罪の非親告化により性犯罪を厳しく取り締まることができるという点が利点として挙げられるだろう。性犯罪は問答無用で裁判にかけられるため、性犯罪者がその責任を免れるという事態をなくすことができる。加えて、加害者も性犯罪は罰せられるべき重大な犯罪であるとの認識を持つことによって、犯罪の実行をとどまらせることができるかもしれない。

まとめ

性犯罪が重大な犯罪であるということを国民に認識させるという一般予防の観点からは、性犯罪の非親告化が適切であると考えられる。一方で、非親告罪になることによって侵害されるおそれのある被害者の名誉やプライバシーも保護する必要があり、そのため、刑事手続上の被害者の配慮のされ方も検討する必要が有る。

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