故意-「たぬき・むじな」事件&「むささび・もま」事件

刑法における故意

刑法38条1項は、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない」と規定している。これの意味するところは故意がない行為は原則として処罰されないということである。行為者が事実について錯誤がある場合には、故意は阻却される。事実の錯誤の対となるのが、違法性の錯誤であり、これは行為が法律上禁止されていることを意識しないことを意味する

「たぬき・むじな」事件

故意について争われた判例として「たぬき・むじな」事件(大判大正14・6・9)と「むささび・もま」事件(大判大正13・4・25)がある。これら2つは非常によく似ている事例だが、前者では、故意を阻却し、後者では故意を阻却しなかった。

「たぬき・むじな」事件では、被告人は狩猟法で捕獲を禁止されている「たぬき」と、俗に「むじな」と呼ばれている動物は別の動物であると誤信して捕獲した。大審院は、法律で捕獲を禁止されている「たぬき」である認識を欠くとして故意を阻却した。

一方で、「むささび・もま」事件では、被告人は、禁猟の「むささび」を一地方の俗称である「もま」と誤信して捕獲した。大審院は、社会通念上、「むささび」と「もま」は同一視されており、被告人は禁猟の法律について知らなかっただけであり、故意は阻却されないとした。

「たぬき・むじな」事件 「たぬき」と「むじな」は社会通念上、別の動物と考えられていた 社会的事実についての錯誤
「むささび・もま」事件 「むささび」と「もま」は社会通念上、同一物と考えられていた 違法性の錯誤

上記のように、「たぬき・むじな」と「むささび・もま」では、当時の社会通念上、認識の違いがあり、その結果として、「事実の錯誤」と「違法性の錯誤」という異なった評価がなされたことがわかる。そのため、これら2つの事案は決して矛盾するものではない。

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