核兵器に関する国際法規

北朝鮮による6回目の核実験を受け、国連安全保障理事会は4日午前(日本時間同日深夜)、緊急会合を公開で開き、対応を協議した。緊急会合は日米韓英仏5カ国が要請した。各理事国は核実験に対し、一致して強い非難を表明。ヘイリー米国連大使は、北朝鮮への制裁強化を訴え、近く決議案を配布し、11日の採決を目指す考えを示した。一方、中国やロシアは対話解決を訴えた。

引用:時事ドットコム

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017090400600&g=use

北朝鮮による核実験に対して国際社会から非難が集まるところであるが、核兵器の保有や使用はどのような条約によって禁止・制限されているのだろうか。

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核兵器の軍縮および不拡散

米ソ間条約

核兵器の制限・削減に関して、米ソ(露)間で締結された条約がいくつか存在する。1969年に開始された戦略攻撃兵器制限交渉(Strategic Arms Limitation Talks: SALT)では、防衛兵器の制限を意図した弾道弾迎撃ミサイル(anti-ballistic missile: ABM)条約(1972年)と戦略攻撃兵器制限暫定協定(SALT I)(1972年)を締結した後、戦略攻撃兵器制限条約(SALT II)(1979年、未発効)が結ばれた。1980~90年代にかけては欧州での核戦力のうち一定の兵器を廃棄する中距離核戦力(INF)全廃条約(1987年)や第1次戦略兵器削減条約(STrategic Arms Reduction Treaty I: START I)1991年)及び第2次戦略兵器削減条約(START II)1993年、未発効)が締結された。しかし、両国間の関係悪化と米国による国家ミサイル防衛(National Missile Defence: NMD)計画推進並びにABM条約脱退により同条約の批准を条件としたSTART IIが頓挫して、その後も両国の核弾頭の上限数を緩和した戦略攻撃能力削減条約(2002年)が締結されたにとどまった。その後、米国はロシアとSTART Iに代わる新戦略兵器削減条約(New START)を2010年4月8日に締結し、2011年2月5日に発効した。

多数国間条約

また、核兵器の制限・削減に関する多数国間条約も存在する。核兵器保有国の増大はその使用の可能性を高めるとの発想から、1968年には核兵器不拡散条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons: NPT)が署名された。核兵器の保有を米ソ(露)英仏中の5か国に限定し、核兵器国は核兵器を他国に移譲しない義務が課せられ(1条)、それ以外の国(非核兵器国)は核兵器の受領・製造が禁止された(2条)。非核兵器国は、製造禁止の義務遵守の検証のため、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency: IAEA)による包括的保障措置の適用も義務づけられた(3条)。これにより、核兵器の水平的拡散を防止する体制が構築された。他方、核兵器の垂直的拡散を防止するため、核兵器国には、核兵器を移譲しないことのほか、核軍縮につき「誠実に交渉する」義務が課せられた(6条)。国際司法裁判所(International Court of Justice: ICJ)は、1996年の核兵器使用の合法性事件において、単なる交渉の義務だけでなく、「核軍縮に導く交渉を誠実に行いかつ完結させる」義務が存在するとする勧告的意見を出している((Legality of the Threat or Use of Nuclear Weapons, Advisory Opinion, I.C.J. Reports 1996, p. 226, para. 99.))。

NPTには、190か国以上が参加しているが、非締約国(インド、パキスタン、イスラエル)のみならず、イランなど締約国においても核兵器の開発(疑惑)が明らかになり、実効性に欠ける。なお、2003年の北朝鮮によるNPT脱退通告は、戦後の主要な軍縮関連条約からの初めての脱退例として注目される。脱退後北朝鮮は、2006年に核実験を実施したため国連安全保障理事会の非軍事的措置の対象となった(決議1718(2006))。イランに対しても、2006年にプルトニウム濃縮による核開発を理由に非軍事的措置が発動された(決議1737(2006))。さらに、イランの核開発疑惑に関しては、2015年7月に安全保障理事会常任理事国+ドイツとイランの間で合意された包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action: JCPOA)によって一応の解決の筋道がつけられた。

核兵器の実験禁止関しては、NPTに先立つ1963年に部分的核実験禁止条約(Partial Test Ban Treaty: PTBT)が締結されている。その背景には、大気圏内核実験による環境汚染の問題、および、核不拡散と核軍縮の観点から、核実験禁止は核の拡散防止と共に核軍縮につながると考えられたことがる。PTBTは大気圏内、宇宙空間、水中における核実験を禁止したが(1条)、地下における核実験は原則として禁止していなかったため、地下核実験の能力を有する先進核兵器国である米英ソ3国は、地下で核実験を続けることができた。他方で、後発核兵器国である仏中両国は、PTBTを3国による核の寡占体制の制度化とみて、この条約には加入していない。

1996年に作成された包括的核実験禁止条約(Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty: CTBT)は、NPTとは異なり、すべての国に対して核実験を包括的に禁止する差別性のない条約であると考えられた。しかし、この条約は、インド・パキスタン・イスラエルの核保有国および特定44か国の批准を要件とするため(14条、附属書2)、近い将来に発効する見込みもない。なお、CTBTは、「核兵器の実験的爆発又は他の核爆発」を禁止するとして、禁止の対象を「核爆発」に限定しており、核爆発を伴わない核実験(未臨界実験など)は検証の困難さなどを理由に禁止おらず、この点でも問題があると指摘されている。

非軍事化・非核化地帯を定める条約

特定の領域における非軍事化・非核化地帯を定める条約もある。

  • 南極条約
  • 宇宙条約
  • 核兵器海底設置禁止条約
  • トラテロルコ条約(1967年)
  • ラロトンガ条約(1985年)
  • バンコク条約(1995年)
  • ベリバンダ条約(1996年)
  • セメイ条約(2006年)

なお、韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が朝鮮半島を非核化することに合意した朝鮮半島非核化共同宣言(1991年)が、1992年2月に発効しているが、非核化を検証するための査察制度について、両者の合意が得られないままになっているので、実質的には機能していない。

核兵器の使用

核兵器の使用を禁止する国際条約は存在しない。ICJは核兵器使用の合法性事件において、「核兵器の威嚇又は使用は、武力紛争に適用され得る国際法の諸規則、とりわけ人道法の諸原則及び諸規則に、一般的には違反するであろうということになる。しかしながら、国際法の現状及び利用可能な事実の諸要素に鑑みると、裁判所は、国家の存続それ自体がかかるであろう自衛の極端な状況において、核兵器の威嚇又は使用が合法か違法かについては、確定的に結論することができない」と判示し((Legality of the Threat or Use of Nuclear Weapons, Advisory Opinion, I.C.J. Reports 1996, p. 226, paras. 95-97 & 105.))、判断を回避した。

北朝鮮による核実験の合法性

上記のように核兵器の実験を禁止する国際条約はいくつか存在する。しかし、北朝鮮は2003年にNPTから脱退すると断定的に宣言している。北朝鮮による脱退それ自体が許されるものかについても議論の余地はあるが、北朝鮮がNPTから脱退しているとすれば、NPTの下での義務は北朝鮮に課せられないことになる。条約の効力は、第三国すなわち条約の当事国でない国に対して、その第三国が同意しない限り、義務又は権利を創設することはできないからである(条約法に関するウィーン条約34条)。よって、北朝鮮による核実験は国際法のいかなる規則にも違反しないといえる。よって、核実験に対しては、国際の平和と安全を脅かしたことを理由とする安保理決議による措置を執るしかないのである。

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