先決問題

先決問題

先決問題とは,ある紛争において当面解決すべき法的問題(本問題)の準拠法を事案に適用するにあたって,前提として解決されていなければならない法的問題のことをいいます.国際私法上,この先決問題の準拠法をどのように決定すべきか,が争点となります.例えば以下のような事案を考えてみます.

相続に従属する養子縁組の問題

A(乙国人)は,B(丙国人)と養子縁組をした後,甲国に帰化して乙国籍を失い,その後死亡した.Bは相続権を主張している.甲国法によると,養子に相続権が認められている.

 以上は,本問題は相続ですが,先決問題としてAとBの養子縁組の存否という問題があります.養子縁組が成立していなければ,Bに相続権は認められないからです.

このような先決問題をどのように取り扱うかについて以下のような考え方が主張されています.

  • 法廷地国際私法:法廷地の国際私法によるべきという考え方です.上記の事案にあてはめると養子縁組の判断は,裁判を行う国の法律を準拠法として判断されます.
  • 本問題準拠実質法説:本問題の準拠法の所属する国の実質法によるべきという考え方です.上記の事案にあてはめると相続の準拠法とされた国の法律が養子縁組の準拠法にもなります.
  • 本問題準拠法所属国国際私法説:本問題の準拠法の所属する国の国際私法によるべきという考え方です.上記の事案にあてはめると相続の準拠法となった国の国際私法によって,養子縁組の準拠法を決定します.
  • 折衷説諸般の事情を考慮し,個別具体的に先決問題の準拠法を決定するという考え方です.

最判平成12年1月27日民集54巻1号1頁

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【事実】

A(韓国人)は妻B(韓国人)との間に子X₁,X₂,X₃を設けた.他方Aは,C(日本人)との間に非嫡出子X₄,X₅がある.後にAは,Bと離婚し,D(韓国人)と婚姻した後,日本に帰化した.Aは,X₄,X₅を認知した上で,Dとの婚姻をそのままにしてYと婚姻し,Y,X₄,X₅と同居した.昭和45年Aが死亡した.

YはAの死亡後,Aの相続財産である本件土地建物を賃貸し,賃料を収受している.X₄はYに対し,A・D(昭和52年死亡)間の婚姻が先に成立しているので,A・Y間の婚姻は重婚であるとし,婚姻取消しの訴えを提起し,婚姻を取り消す旨の判決が確定した.

以上の事実関係のもと,X₄がYに対し,本件建物の明渡及び賃料相当額の金員の支払を求める事件と,YがXらに対し,本件土地建物の時効取得を原因として,持分全部移転登記を求める事件が併合された.

【判旨】

外的な法律関係において,ある一つの法律問題(本問題)を解決するためにまず決めなければならない不可欠の前提問題があり,その前提問題が国際私法上本問題とは別個の法律関係を構成している場合,その前提問題は,本問題の準拠法によるのでも,本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく,法廷地である我が国の国際私法により定まる準拠法によって解決すべきである.

これを本件について見ると,Dの相続に関する準拠法は,旧法例二五条(通則法36条)により被相続人であるDの本国法である韓国法である.韓国民法1000条1項1号によれば,Dの直系卑属が相続人となるが,相続とは別個の法律関係であるXらがDの直系卑属であるかどうか,すなわちDとXらの間に親子関係が成立しているかどうかについての準拠法は,我が国の国際私法により決定することになる.

評価

本判決は,法廷地国際私法説に立っています.そもそも,国際私法の構造上,先決問題が単位法律関係を構成するのであれば,通常の準拠法決定のプロセスにより決定すべきであり,先決問題であることを理由に特殊な準拠法決定の様式を取り入れるべきではありません.また,本問題と先決問題の関係は相対的なものであって,本問題も見方によっては先決問題となり得る以上,先決問題に限って特殊な準拠法の決定方法を採用することは,同じ問題に場合によって異なる準拠法を適用することを意味し,法的混乱を生むことになります.よって、法廷地国際私法説に立つ本判決は支持すべきであるといえます.

まとめ

国際私法が,各単位法律関係ごとに準拠法を決定するという構造になっている以上,先決問題であるということを理由に特殊な準拠法決定方法を採用する余地は存在しません.したがって,先決問題についても法廷地の国際私法に従って,その準拠法を決定する法廷地国際私法説が適切であるといえます.

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